十試軽爆機

十試軽爆機

十試軽爆機（じゅうしけいばくき）は日本の帝国海軍が計画した艦上爆撃機であり、別名十試艦上軽爆機とも称されます。この機体はドイツのハインケル社に設計と開発を依頼する予定がありましたが、実際の製造には至らず、実機は存在しません。

計画の経緯

1934年（昭和9年）、日本海軍は戦闘機並みの高速性能を持つ艦上軽爆撃機の必要性を感じ、単座または複座の高性能機を計画しました。この計画は、同年にドイツ海軍との間で空母技術の供与を行ったことで生まれたもので、技術供与の対価として、1935年（昭和10年）にハインケル社との設計開発交渉が始まりました。

この交渉には、日本海軍から佐波次郎駐独航空本部監督官、西本克美造兵少佐、そして海軍航空廠の山名正夫技師が参加し、ドイツ側からはハインリヒ・ヘルテル技術部長や設計技師のギュンター兄弟が関わりました。しかし、日本側が予算を60万円と設定したものの、価格面での合意には至らず、1935年12月には代替案としてHe 118急降下爆撃機の供与が提案されることになります。その結果、十試軽爆機の計画は終了し、技術的な参考に留まることとなりました。

なお、He 118は1937年（昭和12年）11月に日本に輸入されたものの、愛知時計電機航空機部（後の愛知航空機）によるライセンス生産が計画されていましたが、最終的には採用されませんでした。

機体の設計仕様

日本海軍が求めた十試軽爆機の性能要件は、複座で単葉の形式であること、最大速度は約407 km/h（220ノット・高度3,000 m時）、航続時間は約5時間（170ノットで飛行時）、高度3,000 mへの到達は6分以内であること、といったものでした。

ハインケル社は1935年10月8日に日本海軍に対して、機体の三面図と側面図を提出しましたが、この段階ではエンジンの選定や搭載する装備はまだ未決定でした。さらに、開発スケジュールの大まかな計画も立てられ、この完成機の引き渡しは1937年7月1日を見込んでいました。

結論

十試軽爆機の計画は、日本海軍の艦上機開発史において興味深い事例の一つです。ハインケル社との協力が期待されていたにも関わらず、最終的に技術参考としての位置づけにとどまったこの機体は、当時の両国の航空技術協力の複雑さを象徴しています。その後の日本の艦上爆撃機の発展にどのように寄与したかを考察することは、航空史における重要なファクターとなります。

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