千光寺 (尾道市)

尾道千光寺：瀬戸内海の絶景と歴史を刻む寺院

広島県尾道市東土堂町に位置する千光寺は、真言宗系の単立寺院です。大宝山を山号とし、本尊は千手観音菩薩。中国三十三観音霊場の第十番札所、そして山陽花の寺二十四か寺の第二十番札所としても知られています。

息を呑む絶景と歴史の重み

千光寺は、尾道市街地と瀬戸内海を一望できる絶好のロケーションにあり、その景観は多くの観光客を魅了しています。眼下に広がる尾道水道、向島、そして街並みのパノラマは、まさに圧巻。数々の観光案内にも使用されるほど、尾道の象徴的な風景として定着しています。

寺伝によれば、千光寺は806年（大同元年）に創建されたと伝えられています。源満仲による再興を経て、戦国時代には備後国御調郡木梨村木梨城主の杉原元恒が、この地に支城を築いたという歴史も持ちます。悠久の時を経て、現在も人々を癒し、そして魅了し続けている寺院なのです。

多彩な境内と見どころ

千光寺境内には、本堂、大師堂、客殿、護摩堂、三十三観音堂、大仙堂、毘沙門堂、鐘楼といった様々な建物が点在しています。また、自然を活かした景観も魅力の一つ。撫松庵・磐石の庭、くさり山、玉の岩、鏡岩、梵字岩、岩割松、鼓岩、そして千畳敷・八畳敷といった、自然の造形美を堪能できるスポットが多く存在します。これらの建造物と自然が調和した景観は、まさに千光寺の魅力と言えるでしょう。

文学とのかかわり

千光寺への参道は「文学のこみち」として整備され、文学ファンにも親しまれています。横溝正史の小説『獄門島』には「千光寺」が登場しますが、これは岡山県倉敷市の千光寺であり、尾道の千光寺とは別の寺院です。しかし、尾道千光寺周辺にも文学の息吹は感じられます。千光寺山中腹には「おのみち文学の館」があり、文学と自然を同時に楽しめる環境が整えられています。また、千光寺への階段部分には、足形みちの足形も展示されています。

アクセスと周辺情報

千光寺へのアクセスは、JR西日本山陽本線尾道駅から車で15分、または徒歩20分（千光寺山ロープウェイ利用の場合は山麓駅から3分）です。周辺には、尾道市立美術館などの観光スポットもあります。

伝説と自然災害

境内にある玉の岩は、かつて光る岩があったと伝わる伝説が残されています。また、境内にある鼓岩（ポンポン岩）は、NHK連続テレビ小説『てっぱん』のオープニングシーンにも登場しました。一方で、1976年の台風17号による集中豪雨では、千光寺のある山の西側斜面が崩壊し、土石流が発生。下流の民家が押し流され、死者が出るという悲劇も経験しています。

歴史、自然、そして文学と、様々な要素が織りなす尾道千光寺。訪れる人々に、忘れられない思い出と、深い感動を与え続ける場所と言えるでしょう。

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