千葉卓三郎

千葉卓三郎の生涯

千葉卓三郎（ちば たくさぶろう）は、嘉永5年（1852年）に現在の宮城県栗原市で生まれました。幼少期に実母と別れ、義母に育てられます。11歳で仙台藩の藩校・養賢堂に入学し、大槻磐渓に師事して学びました。16歳で戊辰戦争に従軍、敗戦を経験したことが、彼の人生に大きな影響を与えました。

変転する思想と信仰

戊辰戦争での敗北後、千葉は上京し、ロシア正教のニコライ大主教から洗礼を受けました。しかし、その後、正教から離れ、安井息軒、カトリック宣教師のウィグルス、プロテスタント宣教師のマクレイと、様々な思想や宗教に触れ、医学、数学、ロシア語、国学、儒学など多岐にわたる分野を学びました。一時、商人に転じた時期もありましたが、最終的には教育の道を選びます。

五日市憲法との出会い

1880年、自由民権運動が盛んな五日市町（現在の東京都あきる野市）の勧能学校で教鞭を執ります。同校の校長であった永沼織之丞も、千葉と同じく戊辰戦争で敗戦を経験した仙台藩出身者でした。永沼の辞任後、千葉が二代目校長となり、教え子である深沢権八らと共に私擬憲法「日本帝国憲法」、通称「五日市憲法」を起草しました。

五日市憲法の思想

五日市憲法は、現行の日本国憲法に近い、基本的人権を尊重し、国民の権利保障を重視した画期的な草案でした。この憲法草案は、当時の日本の憲法に対する考え方としては、非常に進歩的なものであり、千葉の思想の深さと先見性を物語っています。しかし、この憲法は実現することなく、千葉の生涯は短いものでした。

晩年と死

持病の結核が悪化したため、1882年から療養生活に入ります。翌年、1883年に31歳という若さで亡くなりました。遺体は仙台の資福寺に埋葬されました。

死後の再評価

千葉の死後、彼の業績は長い間忘れられていましたが、1967年に深沢家の土蔵から大量の文書や蔵書が発見されたことを機に、再評価が進みました。特に、1968年に色川大吉教授によって発見された五日市憲法は、その民主的な思想が注目され、大きな話題となりました。

現代への影響

千葉卓三郎の生涯は、激動の明治時代にあって、多様な思想や文化に触れ、自らの信念を貫き、理想の社会を追求した人物であったと言えるでしょう。五日市憲法は、彼の思想の結晶であり、現代においても、民主主義や基本的人権の重要性を教えてくれます。

参考文献

伊藤始、杉田秀子、望月武人『五日市憲法草案をつくった男・千葉卓三郎』くもん出版、2014年

外部リンク

千葉卓三郎の学習遍歴（あきる野市デジタルアーカイブ）
金成ハリストス正教会・聖使徒イオアン聖堂
日本帝国憲法 (PDF) （日本ペンクラブ「電子文藝館」）
* 【現代語訳】千葉卓三郎「[[五日市憲法]」 - 山本泰弘による現代語訳](https://m.youtube.com/watch?v=L_j8sHj78lY)

付記

千葉卓三郎は、タクロン・チーバと名乗った事もあったとされています。

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