千葉時胤

千葉時胤について

千葉時胤（ちば ときたね）は、鎌倉時代前期に活躍した武将であり、鎌倉幕府の御家人として知られています。千葉氏の第7代当主であり、その生涯は多くの謎と議論に包まれています。

生涯

時胤は、建保6年（1218年）に誕生しました。当初、千葉成胤の三男とされていましたが、近年の研究では千葉胤綱の長男であるという見方が有力です。北条泰時より偏諱を受け「時胤」と名乗りました。

安貞2年（1228年）に父とされる胤綱の死後、千葉介を継承します。嘉禎元年（1235年）には、京都で平経高邸に家臣が乱入するという事件が起こります。この事件は、経高の子である経氏と千葉氏の家臣との間の女性問題が原因であったとされています。当時、時胤はまだ13歳でした。

翌年の嘉禎2年（1236年）には、下総国の一宮である香取社の造営（遷宮）の宣旨を受けます。嘉禎4年（1238年）には、将軍藤原頼経の上洛に供奉する予定でしたが、執権北条泰時の命令で、香取社の造営が終わっていないことを理由に上洛を止められました。この背景には、幕府が香取社の造営遅延や千葉氏への財政負担を懸念したという見方があります。その後、上洛した下総国の地頭にも帰国命令が出されるなど、この一件は幕府の地方統治の方針を示す出来事となりました。

時胤は、香取社の造営中に仁治2年（1241年）に24歳でこの世を去り、後を子の頼胤が継ぎました。

系譜に関する問題

時胤の系譜については、古くから様々な説がありました。『神代本千葉系図』のような古い系図では、時胤は胤綱の長男とされています。しかし、『吾妻鏡』には胤綱の享年が21歳と記されており、時胤が誕生した時にはまだ11歳であったため、江戸時代に作成された『千葉大系図』では、時胤と胤綱を兄弟とし、父を成胤とする説が採用されました。しかし、成胤が時胤の生まれた年に亡くなっているため、この説にも矛盾がありました。

近年になって、本土寺過去帳に胤綱の享年が31歳と記されていることが判明し、『吾妻鏡』の記述が誤りであった可能性が高まりました。これにより、時胤が胤綱の長男であるという古い系図の説が再び有力視されるようになりました。さらに、『徳島本千葉系図』などの別系統の系図でも、時胤が胤綱の子とされており、その信憑性が高まりました。また、時胤が胤綱の長男でない場合、『源平闘諍録』の記述や泰胤が千葉氏を継承できなかった理由の説明がつかないため、時胤は胤綱の長男であり、泰胤は時胤の弟とする説が現在では有力とされています。胤綱が31歳で没したと仮定すると、時胤は胤綱が21歳の時の子となります。

このように、時胤の系譜に関する議論は、歴史的な資料の解釈や系図の分析によって大きく変化しており、彼の出自を巡る研究は現在も進められています。

まとめ

千葉時胤は、鎌倉時代前期に生きた武将であり、千葉氏の歴史において重要な人物です。彼の生涯は、香取社の造営や上洛を巡る出来事、そして系譜に関する論争など、様々な角度から考察されています。特に、近年の研究によって、彼の出自に関する新たな事実が明らかになりつつあり、今後の研究によってさらに詳しい彼の姿が解明されることが期待されています。

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