千葉介

千葉介とは

千葉介（ちばのすけ）は、平安時代末期から戦国時代にかけて、下総国（現在の千葉県北部）を拠点とした武士団・千葉氏の当主が代々名乗った称号です。この称号は、千葉氏の勢力基盤と、彼らが担った役割を象徴するものでした。

千葉氏と千葉介の成立

千葉氏は、桓武平氏の流れを汲むとされる一族で、下総国千葉郡（現在の千葉市周辺）を本拠としていました。千葉介の称号は、千葉氏の当主が下総権介（下総国の在庁官人の長官）に任じられるようになったことに始まります。

記録上、最初に千葉介を名乗ったとされるのは、千葉常重または千葉常胤です。彼らは、下総国における有力な武士であり、国衙（国の役所）の運営にも関与していました。

12世紀前半、国衙の運営は、在京の知行国主や守・大介といった高位の官人が任命されていましたが、実際の国衙の運営は、在地有力者が権介などに任じられ、担当していました。そのような中で、朝廷から正式に任命された介と区別するために、本拠地の地名と権介の地位を組み合わせた「千葉介」という称号が生まれたと考えられています。

千葉介の歴史

千葉介の称号は、千葉氏の宗家が滅亡した後も、支流の千葉氏によって継承されました。千葉介は、戦国時代の末期まで存続し、千葉氏の歴史を語る上で欠かせない存在でした。

康元元年（1456年）、下総守護職であった千葉氏宗家は滅亡しましたが、その後も、支流の下総千葉氏の当主が千葉介の称号を継承しました。この称号は、天正18年（1590年）、千葉重胤（または千葉直重）が豊臣政権によって所領を没収され、滅亡するまで続きました。

千葉介の「千葉」は、千葉氏の本拠地である千葉郡・千葉荘に由来し、「介」は、千葉氏の当主が下総権介の地位にあったことを示します。

千葉介の背景

大治5年（1130年）に作成された『下総権介平朝臣経繁寄進状』には、平経繁という人物が登場します。この平経繁は、千葉常重の別名と考えられています。この文書は、相馬御厨の支配を巡って、永暦元年（1161年）に常重の子である常胤と佐竹義宗が争った際に、常胤も下総権介であったことを示しています。

ただし、常重の弟である海上常衡も下総権介であった可能性が高く、常重から常胤に権介が世襲された可能性は低いとされています。

他の「介」の例

千葉介のように、本拠地の地名と権介の地位を組み合わせた称号は、他にも存在しました。例えば、相模国の三浦氏の当主が名乗った「三浦介」などが挙げられます。これらの称号は、当時の地方武士の勢力と、彼らが果たした役割を示すものとして重要です。これらの「介」を総称して「八介」とも呼ばれています。

まとめ

千葉介は、千葉氏の歴史を語る上で欠かせない重要な称号です。この称号は、千葉氏が下総国における有力な武士であり、国衙の運営にも深く関与していたことを示しています。千葉介の存在は、当時の地方武士の勢力と、彼らが果たした役割を理解する上で、重要な手がかりとなります。


参考文献
野口実 著「千葉介」、古代学協会; 古代学研究所 編『平安時代史事典』角川書店、1994年。ISBN 978-4-040-31700-7。
千野原靖方『千葉氏 鎌倉・南北朝編』崙書房出版、1995年。ISBN 978-4-845-51015-3。
* 峰岸純夫「治承・寿永内乱期の東国における在庁官人の「介」」『日本中世の社会構成・階級と身分』校倉書房、2010年。ISBN 978-4-751-74170-2。

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