千葉高等園芸学校

千葉高等園芸学校（ちばこうとうえんげいがっこう）は、1929年（昭和4年）5月に設立された、日本の官立旧制専門学校の一つです。その源流は千葉県立園芸専門学校にあり、後に千葉農業専門学校と改称され、最終的には学制改革によって千葉大学に包括され、現在の千葉大学園芸学部の前身となりました。本項目では、これらの前身校や改称後の学校についても記述します。

概要

本校は、元々千葉県によって設立された千葉県立園芸専門学校を母体としています。後に国（文部省）へ移管され、日本の専門学校としては唯一の官立高等園芸学校としての地位を確立しました。教育課程として本科（当初は園芸科）、後に実務科を設置。特に注目されるのは、他の官立高等農林学校と比較して、卒業生の多くが実際に農業に従事するか、あるいは農業学校の教員となった点にその特色がありました。太平洋戦争中に校名を千葉農業専門学校と改めましたが、終戦後の学制改革により、新制千葉大学の一部として組み込まれ、同学部の園芸学部として再出発を果たしました。卒業生によって組織される同窓会として「戸定会」があります。

沿革

学校の歴史は、1909年（明治42年）に千葉県立園芸専門学校として始まったことに遡ります。同年3月には専門学校令に基づき設置が認可され、翌4月に予科（4年制）と本科（3年制）を設けて開校しました。予科が設置されたのは、廃止が決定していた私立松戸中学校の在校生を受け入れるためでした。同年5月には敷地内に農場が開設され、実習環境が整備されました。開校翌年の1910年5月には、予科は廃止されます。その後、1914年（大正3年）4月には校名が千葉県立高等園芸学校へと改められました。

学校の転機となったのは、1929年（昭和4年）6月に文部省へ移管され、官立学校としての千葉高等園芸学校に改組されたことです。この改組に伴い、3年制の本科が改めて設置されました。教育内容の拡充は続き、1937年（昭和12年）4月には1年制の実務科が設けられます。太平洋戦争下の1942年（昭和17年）4月には、従来の本科を園芸学科と名称変更し、新たに農芸化学科が増設されました。さらに戦況が厳しくなった1944年（昭和19年）4月には、校名が千葉農業専門学校へと変更されると共に、学科名も園芸学科は園芸科、実務科は農業実科と改称されました。

戦後、学校は再編期を迎えます。1947年（昭和22年）4月には本科に緑地土木科が新設され、同年7月には群馬県に利根高冷地農場が開設されるなど、教育研究の場が広がりました。そして、1949年（昭和24年）5月、国立学校設置法の施行に伴い、千葉大学に包括される形で、現在の園芸学部が誕生しました。この新学部には、園芸学科、農芸化学科、造園学科が設置されました。包括後も千葉農業専門学校としては存続しましたが、1951年（昭和26年）3月に廃止されました。旧実務科にあたる農業実科は、廃止に先立つ1951年4月に千葉大学園芸学部の農業別科として再組織されています。

校地の変遷と継承

学校の設置場所は、その歴史を通して一貫して現在の千葉県松戸市戸定丘（旧東葛飾郡松戸町戸定丘）にありました。この土地は、かつて県立千葉中学校の松戸分校や、その後設立された私立松戸中学校の校地として利用されていました。前述の通り、創設時の予科は、この私立松戸中学校の在校生を引き継ぐ目的で設置されたものです。戸定の地は、千葉県立園芸専門学校から千葉県立高等園芸学校、官立千葉高等園芸学校、千葉農業専門学校へと引き継がれ、さらに新制千葉大学園芸学部のキャンパス（松戸キャンパス）として、現在もその教育・研究の場となっています。

歴代校長

千葉県立園芸専門学校・千葉県立高等園芸学校

校長事務取扱：田中喜介（1909年3月-1909年7月）
初代：鏡保之助（1909年7月-1912年6月）- 京都府立農林学校長などを経て、朝鮮総督府へ。後に盛岡高等農林学校長。
第2代：赤星朝暉（1912年6月-1929年5月）- 前職は新潟県立加茂農林学校長。

官立千葉高等園芸学校・千葉農業専門学校

初代：赤星朝暉（1929年6月-1931年11月）- 新潟県立加茂農林学校長へ転任。
第2代：松井謙吉（1931年11月-1945年11月24日）
第3代：武田憲治（1945年11月24日- ）- 新制千葉大学園芸学部の初代学部長に就任。

著名な出身者

三須精一 - 貴族院男爵議員
村上与市 - 政治家
森田豊寿 - 衆議院議員、参議院議員

千葉高等園芸学校