千野香織

千野 香織（ちの かおり）

千野香織は、1952年8月19日に神奈川県横須賀市で生まれた日本の美術史学者である。彼女は、特に日本美術史に関する研究で知られており、フェミニズムやジェンダーの視点を取り入れた学問的アプローチで新たな領域を切り拓いた。

幼少期と学歴

千野は開業医の家庭で長女として育ち、東京学芸大学附属世田谷小学校および中学校を経て1971年に東京学芸大学附属高等学校を卒業した。その後、1972年に京都大学文学部に進学し、1976年には哲学科美学美術史学専攻を卒業した。在学中、彼女は同年に高校の一学年上の同級生であったダウン・タウン・ブギウギ・バンドのキーボード奏者と結婚したが、後に離婚することとなる。

続いて1978年には東京大学大学院人文科学研究科の美術史学専攻日本美術史の修士課程を修了し、1979年からは名古屋徳川美術館の研究員としてのキャリアをスタートさせた。1983年には同大学院博士課程の単位を取得後、東京国立博物館資料部で研究員として働くようになる。また、学習院大学文学部哲学科では助教授から教授に昇格し、教育界にも多大な貢献を果たした。

業績と受賞歴

千野の研究は多岐にわたるが、特に1993年に西和夫との共著で出版された『フィクションとしての絵画』は評価され、小泉八雲賞を受賞した。この受賞は、彼女が美術史においてノンフィクションとフィクションの境界を模索し、新たな視点を提供したことの証とも言える。

また、1994年頃からは若桑みどりらと共に、美術史にジェンダーやフェミニズムの視点を取り入れる取り組みを進め、当時の美術史研究における革新をもたらした。これにより、彼女は単なる美術史学者から、社会的な視点を重視する学者へと進化したと評価されている。

著作

千野の著作は非常に多岐にわたり、代表的なものとして以下の書籍が挙げられる。

• - 『岩波日本美術の流れ 3 10-13世紀の美術 王朝美の世界』（岩波書店, 1993）
• - 『千野香織著作集』（千野香織著作集編集委員会編、ブリュッケ, 2010）

また、共編著としての作品も豊富で、

• - 『フィクションとしての絵画 美術史の眼建築史の眼』（西和夫共著、ぺりかん社, 1991）
• - 『美術とジェンダー 非対称の視線』（鈴木杜幾子、馬渕明子共編著、ブリュッケ, 1997）
• - 『女?日本?美? 新たなジェンダー批評に向けて』（熊倉敬聡共編、慶應義塾大学出版会, 1999）

などがある。これらの作品は、彼女の学問的探求の深さと幅広さを示すものとなっている。

晩年と追悼

千野香織は2001年12月31日に心不全のため東京都の自宅で逝去した。彼女の死去に際し、中世日本研究所では同年から毎年「千野香織記念『新視点』講演」を開催し、彼女の業績を称えるイベントを続けている。また、優れた英文論文に対して千野香織記念賞を授与することで、彼女の業績を未来に引き継ごうという取り組みも行われている。

千野香織の業績は、日本美術史学の発展に寄与し続けており、彼女の研究は今後も多くの人々に影響を与えることでしょう。

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