卒業-オリジナル・サウンドトラック

『卒業』オリジナル・サウンドトラック

1967年公開のアメリカ映画『卒業』のサウンドトラックアルバムは、サイモン&ガーファンクルの楽曲が中心に構成されています。多くのファンは、このアルバムをサイモン&ガーファンクルの作品として認識していますが、実際にはデイヴ・グルーシンが作曲したインストゥルメンタルも6曲収録されており、アルバムジャケットには「ADDITIONAL MUSIC BY DAVID GRUSIN」と明記されています。音楽を担当したポール・サイモンとデイヴ・グルーシンは、このアルバムでグラミー賞の最優秀インストゥルメンタル作曲賞（映画・テレビ音楽）を受賞しました。

制作の背景

1966年、『卒業』のマイク・ニコルズ監督は、ポール・サイモンにサウンドトラックの制作を依頼しました。サイモンは当初、新曲「パンキーのジレンマ」と「オーバース」を提供しようとしましたが、ニコルズ監督はこれらの曲を却下しました。その代わりに、サイモン&ガーファンクルがすでに発表していた「サウンド・オブ・サイレンス」、「スカボロー・フェア/詠唱」、「4月になれば彼女は」、「プレジャー・マシーン」が映画の雰囲気に合致すると判断しました。

ニコルズ監督はサイモンにさらなる新曲を依頼しましたが、サイモンは多忙を極めており、約束していた3曲の新曲を完成させることができませんでした。結果的に、ツアー中に制作した新曲「ミセス・ロビンソン」を提供することになりました。この「ミセス・ロビンソン」は、当初「ミセル・ルーズベルト」という歌詞でしたが、アート・ガーファンクルの提案により、映画の登場人物であるミセス・ロビンソンの名前に変更されました。

アルバムの最後に収録されている「サウンド・オブ・サイレンス」の別バージョンは、実際に映画で使用されたものとは異なる演奏です。音楽評論家のBruce Ederは、allmusic.comにおいてこのバージョンを「2人が残したこの曲のスタジオ録音の中でも最良の演奏かもしれない」と評しています。

サウンドトラックには、サイモン&ガーファンクルの楽曲とデイヴ・グルーシンの楽曲が使用されましたが、それぞれがLPレコードを1枚満たすほどの曲数ではなかったため、プロデューサーのテオ・マセロは両者の楽曲をまとめて収録することにしました。

反響

1968年にアメリカで発売されたこのアルバムは、サイモン&ガーファンクルにとって初のBillboard 200での1位獲得という快挙を成し遂げました。7週連続で1位を維持した後、一旦はサイモン&ガーファンクルのスタジオアルバム『ブックエンド』に首位を譲りましたが、再び1位に返り咲き、最終的にサイモン&ガーファンクルのアルバムが16週連続で全米1位を独占することになりました。

日本では1968年8月20日にCBSソニー・レコードから発売され、1970年に入ってからも売り上げを伸ばし、オリコンLPチャートで最高50位を記録しました。イギリスでは1968年10月に全英アルバムチャートにランクインし、1969年2月には最高3位に達しました。ノルウェーでも1969年初頭にチャート入りし、7週連続で2位を獲得しました。

本作に初収録された「ミセス・ロビンソン」は、1968年2月2日に再度レコーディングされ、同年4月に発表されたアルバム『ブックエンド』にフルバージョンが収録されました。『ブックエンド』に収録されたバージョンは、本作のバージョンとは歌詞が一部異なっています。また、「ミセス・ロビンソン」はシングルとしてもリリースされ、サイモン&ガーファンクルにとって2作目の全米1位獲得シングルとなりました。

その後

『卒業』は後にミュージカル化され、2002年から2003年にかけてブロードウェイで上演されました。このミュージカル版のサウンドトラックアルバムには、オリジナルの映画で使用されたサイモン&ガーファンクルの「ミセス・ロビンソン」と「サウンド・オブ・サイレンス」が収録されました。

2004年にAFIが選出した「アメリカ映画主題歌ベスト100」では、「ミセス・ロビンソン」が6位にランクインしました。また、イギリスの新聞『オブザーバー』が2007年に選出した「The 50 greatest film soundtracks」では、本作が27位に選ばれました。

収録曲

1. サウンド・オブ・サイレンス - "The Sounds of Silence"
2. シングルマン・パーティー - "The Singleman Party Foxtrot" (Dave Grusin)
3. ミセス・ロビンソン（映画ヴァージョン1） - "Mrs. Robinson (Version 1 as Heard in Film)"
4. サンポーチ・チャチャチャ - "Sunporch Cha-Cha-Cha" (D. Grusin)
5. スカボロー・フェア/詠唱 - "Scarborough Fair/Canticle (Interlude)" (Paul Simon, Art Garfunkel)
6. オン・ザ・ストリップ - "On the Strip" (D. Grusin)
7. 4月になれば彼女は - "April Come She Will"
8. ザ・フォークス - "The Folks" (D. Grusin)
9. スカボロー・フェア/詠唱 - "Scarborough Fair/Canticle" (P. Simon, A. Garfunkel)
10. グレート・エフェクト - "A Great Effect" (D. Grusin)
11. プレジャー・マシーン - "The Big Bright Green Pleasure Machine"
12. 驚き - "Whew" (D. Grusin)
13. ミセス・ロビンソン（映画ヴァージョン2） - "Mrs. Robinson (Version 2 as Heard in Film)"
14. サウンド・オブ・サイレンス - "The Sound of Silence"

このアルバムは、単なる映画のサウンドトラックという枠を超え、音楽史に残る名盤として、今もなお多くの人に愛され続けています。

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