南から来た男 (アルバム)

クリストファー・クロスのデビューアルバム『南から来た男』は、彼の名を一躍有名にした作品であり、音楽史においても重要な位置を占めています。1979年半ばにレコーディングされ、同年12月にリリースされたこのアルバムは、3Mデジタル・レコーディング・システムを活用した初期のデジタル録音アルバムの一つとして知られています。

このアルバムは、1970年代後半から1980年代前半にかけてのソフトロックシーンに大きな影響を与え、アルバム・オブ・ザ・イヤー、レコード・オブ・ザ・イヤー、ソング・オブ・ザ・イヤー、最優秀新人賞を含む5部門でグラミー賞を受賞しました。クリストファー・クロスは、主要4部門を同一年に受賞した初のアーティストとなり、この偉業は2020年のビリー・アイリッシュまで達成されませんでした。

音楽評論家スティーヴン・トマス・アールワインは、このアルバムを「大ヒットとなり、広く賞賛され、少なくとも業界関係者の間では支持された」と評価しています。彼は、本作のソフトロックとしての成功は、ほとんどの聴き手にとって意味のないことだろうとしながらも、その一貫した良質な楽曲とクロスの技巧的に優れたミュージシャンシップによって、「当時、主流だったアルバム群の中の最良の部分であることは間違いない」と述べています。また、アールワインは、クロスの感傷的な雰囲気、甘美なバラード、豊かな旋律、しっかりとした楽曲構成を高く評価し、マイケル・マクドナルドのバッキング・ボーカルをはじめとするスタジオ・ミュージシャンたちの貢献も特筆しています。

『南から来た男』は、ヨット・ロックというジャンルの重要な作品としても認識されています。2009年には、チャック・エディが雑誌『スピン』で発表したリストの中で、このアルバムをヨット・ロックに欠かせない8枚のアルバムの一つとして挙げています。ティモシー・マルコムは、2017年に発表した最良のヨット・ロック・アルバム10枚のリストに本作を加え、「このアルバムは、実のところヨット・ロックのジャンルからは音響的には少し外れており、アコースティック・ギターやストリングスが強調されている。しかし、そのメッセージはこのジャンルにぴったりであり、内面の平安を求める愚か者のためのものであって、そして何より、極めてスムーズに流れるのである」と述べています。マイケル・H・リトルは、本作をヨット・ロック最高のアルバムの一つとして評価し、クロスを「ソフトロックの顔」と評しました。

収録曲

1. セイ・ユール・ビー・マイン / Say You'll Be Mine
2. 愛はまぼろし / I Really Don't Know Anymore
3. スピニング / Spinning（ヴァレリー・カーターとのデュエット）
4. もう二度と / Never Be the Same
5. 哀れなシャーリー / Poor Shirley
6. 風立ちぬ / Ride Like the Wind
7. ライト・イズ・オン / The Light Is On
8. セイリング / Sailing
9. ジゴロの芸人 / Minstrel Gigolo
10. マリー・アン / Mary Ann（日本盤CDボーナス・トラック）

参加ミュージシャン

ラリー・カールトン (ギター)
ヴァレリー・カーター (ボーカル)
レニー・カストロ (パーカッション)
クリストファー・クロス (ボーカル、ギター)
ヴィクター・フェルドマン (ヴィブラフォン、パーカッション)
チャック・フィンドレー (トランペット、フリューゲルホルン)
ジェイ・グレイドン (ギター)
ドン・ヘンリー (バッキング・ボーカル)
ジム・ホーン (サックス)
エリック・ジョンソン (ギター)
* マイケル・マクドナルド (バッキング・ボーカル)

『南から来た男』は、クリストファー・クロスの音楽キャリアにおける金字塔であり、ソフトロック、ヨット・ロックのジャンルを超えて、多くの音楽ファンに愛され続けています。

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