南レバノン県

南レバノン県は、レバノンの最南部に位置する県で、その多様な地形と文化が特徴です。県都はサイダ（シドンとしても知られる）で、この地域は歴史的にも重要な役割を果たしてきました。2017年の推定人口は約59万人で、面積は929.6平方キロメートルと、レバノン国内では比較的小さな県ですが、その地理的な特徴は多様です。

標高は0メートルから1000メートルに及ぶ起伏に富んだ地形を持ち、海岸線から山岳地帯まで、多様な景観が広がっています。この多様な地形は、農業にも影響を与えており、特に柑橘類やバナナの栽培が盛んです。温暖な気候がこれらの作物の育成に適しており、地域経済の重要な柱となっています。

住民構成は、イスラム教のシーア派、スンニ派をはじめ、東方正教、カトリック、プロテスタント、アルメニア正教など、多様な宗教を信仰する人々が共存しています。この宗教的多様性は、地域の文化的な豊かさに貢献している一方で、社会的な課題も生み出す可能性があります。

南レバノン県は、歴史的には「南部県」とも呼ばれていました。レバノンが独立した当初は、5つの県の一つとして、レバノン南部全域を管轄していました。しかし、1975年に東部の4郡がナバティーエ県として分離独立したため、その面積は半分以下に縮小しました。また、これによって、国内の最南端がナバティーエ県に移ることとなりました。この県境の変更は、南レバノン県の政治的、地理的な重要性を大きく変えました。

南レバノン県は、北に山岳レバノン県、東にベッカー県、そして南にナバティーエ県と接しています。この地理的な位置は、隣接する県との関係性を深くし、地域間の交流や経済活動に影響を与えています。

県は3つの郡に区分されています。

ジェジーン郡（Jezzine）
サイダ郡（Saida/Sidon）
* ティール郡（Tyre）

これらの郡は、それぞれ独自の歴史と文化を持ち、地域の多様性をさらに豊かにしています。主要な都市としては、カナ、サイダ（シドン）、ティール（ティルス）が挙げられます。特にティールは、世界遺産であるティルス遺跡で知られており、歴史愛好家や観光客にとって非常に魅力的な場所です。ティルス遺跡は、古代フェニキア文明の重要な遺跡であり、この地域が古代から重要な交易拠点であったことを物語っています。

南レバノン県は、その複雑な歴史、多様な文化、そして豊かな自然が混ざり合った地域です。この地域は、レバノンの歴史と文化を理解する上で、非常に重要な場所の一つと言えるでしょう。

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