ティルス

ティルス（Tyrus）について

ティルス（Tyrus）、またはテュロス（Tyros）は、南西レバノンの地中海に面した歴史的な都市遺跡です。この場所は現在のスール（アラビア語で「岩」を意味するティールとも呼ばれる）にあたります。ティルスは1994年にユネスコの世界遺産として登録され、その文化遺産としての価値が認められています。

概要

ティルスの起源は紀元前2500年ごろに遡ります。当初は陸地に位置していましたが、紀元前1000年ごろ、ティルス王ヒラムにより島の上に移転しました。紀元前332年には、マケドニアのアレクサンドロス大王が本拠地に攻撃を仕掛ける際、島と陸地を結ぶ突堤を築き、以降は半島として存在しています。

ティルスはまた、自噴井がある地中海の砂浜に位置し、その周辺では様々な農産物が栽培されています。特にアオウミガメやアカウミガメの産卵地としても知られ、1999年にはラムサール条約に登録された保護地域となりました。フェニキア人の文明が築いたこの都市は、かつて商業の中心地であり、紀元前1000年ごろにフェニキアの首都として栄光を誇りました。

歴史

ティルスは紀元前2500年にビブロスやベイルートと共にフェニキア人の重要都市として成立しました。独立した都市国家としての歴史は紀元前1200年頃から始まり、紀元前11世紀から紀元前9世紀にかけて最盛期を迎えました。この時期、ティルスは地中海における貿易の拠点となり、後にカルタゴの植民都市を設立しました。

しかし、紀元前9世紀にアッシリアが勢力を強化すると、ティルスは他のフェニキア諸都市同様にその支配下に置かれました。紀元前701年と671年には、エジプトとの同盟を結びアッシリアに反乱を起こしましたが、その後もアッシリアに服属し続けました。紀元前586年には新バビロニアに包囲され、長期間の抵抗の後に服属しました。

マケドニアのアレクサンドロス大王の東征時、ティルスは唯一激しく抵抗したフェニキアの都市でしたが、包囲されて7か月の戦いの後に陥落しました。この戦いでは多くの市民が death 、または奴隷となりました。アレクサンドロス大王の許しによって都市は再建されましたが、当時の繁栄は失われました。

その後、ティルスはセレウコス朝やローマ帝国の支配を受け、12世紀には十字軍による支配も経験しました。第三回十字軍時代には史上最も重要な戦いの一つが行われましたが、イスラム化が進むにつれて都市としての機能は縮小し、最終的には放棄されました。

現在のティルス

今日のティルスには多数のローマ帝国時代の遺跡が残っており、風化が少ない状態で保存されています。しかし、かつて存在した都市の面影は薄れ、周囲にはスールやアナーなどの小村が点在するのみです。ティルスは、人類の歴史において重要な役割を果たした都市であり、今でもその遺跡は見る者を魅了します。文献にも記されているように、フェニキア人の海洋文化、商業、政治の舞台であったティルスは、古代と現代を結ぶ重要なリンクの一つとされています。

主な史跡

ティルスの代表的な史跡には、凱旋門、大浴場、ローマ劇場などがあり、これらは古代の繁栄を物語っています。

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