南九州型城郭

南九州型城郭とは

南九州型城郭とは、九州南部に見られる特有の城郭様式です。シラス台地の縁に形成された崖（ガリ地形）を天然の空堀として利用している点が最大の特徴です。この様式は、1987年に村田修三氏によって「図説中世城郭辞典」で初めて報告されました。

特徴

南九州型城郭は、以下の様な特徴を持っています。

群郭式の縄張り: 曲輪が階段状に連なるのではなく、深い空堀によって隔てられた、ほぼ同じ標高の曲輪が複数並立する配置となっています。これにより、各曲輪が独立性を持ち、敵の侵入を防ぐ構造となっています。
巨大な空堀: シラス台地の崖を利用しているため、深く幅広な空堀が特徴です。知覧城では、その深さが20～30mにも達します。また、高い切岸も造成しやすく、防御力を高めています。
敵の視界を遮る構造: 敵は、深い堀底を通るため、城内の様子を見通すことが難しく、本丸や主郭の位置を把握しづらいという利点があります。これにより、敵の侵攻を遅らせ、城側が有利に戦えるようになっています。
曲輪間の連携の難しさ: 幅広な空堀が曲輪同士の連絡を妨げるため、各曲輪が独立してしまい、連携や統制が取りにくいという弱点もあります。そのため、各個撃破される危険性も考慮する必要がありました。

代表的な城郭

南九州型城郭の代表例として、以下のものが挙げられます。

都於郡城
知覧城
人吉城
志布志城
飫肥城
佐土原城
清色城
都之城
高山城 (大隅国)

これらの城郭は、いずれもシラス台地の地形を巧みに利用し、独自の防御構造を築いています。

研究者

南九州型城郭の研究に携わっている主な研究者として、以下の方々が挙げられます。

三木靖: 南九州城郭談話会会長、鹿児島国際大学名誉教授。南九州の城郭研究の第一人者です。
新東晃一: 南九州縄文研究会代表、南九州城郭談話会副会長。考古学的な視点からも南九州の城郭研究を進めています。

関連情報

参考文献:
八巻孝夫「都城」『中世城郭研究』第5号、中世城郭研究会、1991年
別冊歴史REAL 日本の山城100名城
学研学習社　戦国の堅城　ⅠⅡ
関連項目:
シラス
外部リンク:
* 山城散歩 みちくさ

南九州型城郭は、その独特な構造から、日本の城郭の中でも特異な存在です。シラス台地という特殊な地形が、このような独自の城郭様式を生み出したと言えるでしょう。これらの城郭を訪れることで、当時の人々の知恵と工夫を肌で感じることができます。

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