人吉城

人吉城の概要

人吉城（ひとよしじょう）は、熊本県人吉市にかつて存在した平山城であり、相良氏が鎌倉時代から江戸時代まで長い間、城主として在城しました。城は球磨川の南側、支流の胸川との合流点の山に築かれています。この城は、自然の地形を巧みに利用しており、北と西は川を天然の堀とし、東と南には山の斜面や崖が天然の城壁として働いています。特に、三の丸、二の丸、本丸といった梯郭式の構造が特徴的です。

本丸には天守が存在せず、護摩堂があったとされています。また、中世には本丸から谷を挟んで、上原城、中原城、下原城という支城も存在していましたが、現在の城跡公園にはこれらは含まれていません。

幕末に入ると、御館の石垣一部に特徴的な「武者返し」という構造が見られ、これはヨーロッパの築城技術であるハネ出し工法を応用したものです。この武者返しは敵が城壁を乗り越えにくくする一方、攻撃にも使用できるデザインになっています。この特異な城壁は、日本国内では函館の五稜郭や龍岡城にも見られますが、人吉城の規模に匹敵するものは他にあまりありません。特に、球磨川側の武者返しの高さは、かつての火災からの防火対策としても機能していたとされています。

現在、人吉城の跡地は「人吉城公園」として整備されており、城の櫓や塀が復元されています。さらに、城址の西には相良護国神社も存在します。かつては、城内に野球場や市役所、市民会館があったが、熊本地震の影響を受け、これらは移転し、現在は人吉城歴史館と駐車場が整備されています。

歴史の流れ

城の歴史は、鎌倉時代に遡ります。源頼朝に仕えていた相良長頼が元久2年（1205年）に肥後国人吉荘の地頭に任命されたことから始まります。最初は平頼盛の家臣が支配していましたが、長頼はこの城を拡張し人吉城の基礎を築きました。築城時には三日月型の模様のある石が出土し、このために人吉城は「繊月城」とも呼ばれることがあります。

戦国時代になると、相良氏は球磨地方の統一を実現しますが、内訌により、北原氏に包囲される事件もありました。これを相良義滋が巧みに攻略し、城を守り抜きました。その後、相良義陽の時代に天正年間にかけて城の大改修が進められ、22代当主の相良頼寛が寛永16年（1639年）に近代的な城郭へと生まれ変わりました。

関ヶ原の戦いでは、当初は石田三成側に立っていましたが、最終的に徳川方に内応し、戦功を挙げました。これにより、家康から2万2千石の領地が与えられました。

江戸時代に入ると、城は火災に見舞われ、全焼する事態が発生するなど惨事が続きました。その後、明治4年（1871年）には廃藩置県に伴って廃城となり、明治10年の西南戦争では西郷軍の拠点となり、再び戦闘の舞台となりました。

現在、城跡は人吉城公園として整備されており、国指定の史跡にもなっています。1961年には史跡に指定され、さらに歴史館や各種施設が整備されています。また、2006年には日本の100名城に選定されるなど、歴史的価値が認められています。

迫りくる大量の雨による被害を受けた2020年の豪雨からも、復旧が進められている人吉城の維持と発展が期待されます。

もう一度検索