南京の鶯

南京の鶯：抗日放送の歴史

南京の鶯、すなわち劉俊英は、1932年から中華民国の中央広播電台にて日本語放送を担当していた女性アナウンサーです。彼女の活動は、当時の中国が直面していた危機的な状況を反映し、特に日本の侵略に対する重要なプロパガンダの一部として機能しました。

中央広播電台の設立と日本語放送の開始

中央広播電台は1928年8月1日に南京で放送を開始し、1932年1月28日に吹き荒れた第一次上海事変を受けて、日本語放送を始めることになりました。同年11月13日からは、75kWという大出力の中波送信機を導入し、その後の報道の質を大きく向上させました。当時、同じ周波数で放送を行っていた日本放送協会の福岡局と混信を引き起こし、結果として強力な抗日的メッセージが日本国内に響き渡ることになりました。このため、「南京の鶯」という怪放送は広く認識され、外交問題にまで発展しましたが、1933年9月には周波数が変更されたことで問題は一時的に解決を見ました。

抗日放送と女性たちの役割

1937年11月、日本軍の南京侵攻に伴い、中央広播電台は漢口、重慶へと移転しました。日本語放送は11月19日には停止し、以後は新たに配置された長沙広播電台からの放送が中心となりました。この時期、長谷川照子（愛称・テル、筆名・緑川英子）が「中国の緑の星」として活躍し、抗日・反戦のメッセージを発信しました。彼女は1938年に香港から広州を経て漢口に到着し、国際宣伝処で日本語放送を行っていましたが、侵攻の影響で重慶に移ることとなり、やがて日本軍の占領を受けて彼女の正体が明らかになりました。

長谷川の活動は、抗日から反共へと変化していく国民党の方針に影響され、1941年までに宣伝部を離れることを余儀なくされました。日中戦争の終結後、彼女は中国共産党に参加し、旧満州で活動を再開しましたが、1947年に病気によって命を落としました。

新たな放送局の誕生とその背景

南京の鶯として知られる劉俊英も同様に消息を絶つこととなり、彼女の存在は中国の抗日運動における一つの象徴となりました。一方、1940年12月30日に設立された延安新華広播電台は、女性アナウンサー・原清子（後の清志）による初の海外放送を行い、日本語放送を開始しました。延安では厳しい状況下、手作りの放送設備を用いて兵士たちに向けた放送を行っていました。送信機の出力は不安定でしたがその苦境の中でも放送活動が継続され、その芽が後の中国国際放送へとつながっていくのです。

これらの歴史は、単なるメディアの発展に留まらず、当時の社会状況や抗日戦争の中で女性たちの果たした役割の重要性を際立たせています。彼女たちは、国を守るために声を上げ、情熱を込めて抗戦のメッセージを広めました。

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