南国の街 宮崎市

南国の街 宮崎市

「南国の街 宮崎市」（なんごくのまち みやざきし）は、宮崎県の県庁所在地である宮崎市が現在、市民歌として使用している楽曲です。この歌は1974年（昭和49年）に、宮崎市が市制施行50周年を迎えたことを記念して制定されました。作詞は渡辺千万氏、作曲は橋本睦生氏によるものです。

初代市歌とその背景

宮崎市にとって、この歌は二代目の市民歌にあたります。初代「宮崎市歌」は、第二次世界大戦下の1942年（昭和17年）2月11日に、当時の青木善祐市長の提唱により制定されたものでした。作詞は長渡政男氏、作曲は佐藤禎二氏が担当しました。しかし、この初代市歌の歌詞には「皇祖の御偉業」「八紘一宇建国の」「愛市の叫び翼賛の」といった、当時の戦時体制や国家思想を強く反映した表現が多く含まれていました。そのため、1945年（昭和20年）に終戦を迎えると、こうした時代背景を色濃く映した歌詞は社会情勢にそぐわないものとなり、次第に歌われなくなりました。結果として、初代市歌はわずか3年半あまりで演奏されなくなるという短い歴史を終えました。

新しい市民歌の誕生

終戦を経て、日本が高度経済成長期を迎える中で、改めて市民に親しまれる市の歌を持つべきだという声が上がりました。そして、1974年に宮崎市が市制施行50周年を迎える節目に、新しい市民歌を制定する計画が進められました。新しい歌の歌詞は一般公募され、合計で69篇の応募作品が集まりました。その中から、宮崎市内に住む主婦であった渡辺千万氏の応募作が選ばれ、入選作として採用されました。次に、この歌詞にメロディーを付ける作曲は、宮崎大学教育学部の橋本睦生氏に依頼されました。こうして完成した「南国の街 宮崎市」は、1974年4月1日付で正式に制定され、同日に開催された市制50周年記念式典の場で初めて公の場で演奏されました。

特徴と現在の活用

この二代目市民歌の歌詞は、戦時色を帯びていた初代市歌とは大きく異なり、平和で穏やかな内容が特徴です。1978年に刊行された『宮崎市史 続編』の上巻では、この新旧の歌詞を比較し、「時代の推移を感ぜずにはいられない」とその対比について述べており、平和な時代に生まれた歌であることを示唆しています。

歌の普及のため、制定時には市の主導でシングルレコードも制作されました。このレコードには、田中聖氏と吉川ひかる氏の歌唱、そしてニュー・サウンズ・オーケストラの演奏が収録されました。

現在でも、「南国の街 宮崎市」は市の様々な場面で活用されています。特に、宮崎市役所では毎朝と昼の始業時刻前に庁内放送を通じて演奏されており、職員や来庁者が日常的に耳にする機会を提供しています。また、宮崎市に関連する楽曲としては、市民歌のほかに、2014年に市制90周年を記念して制作されたイメージソング「太陽のまち」があります。こちらは、作詞・作曲・歌唱を松浦梓氏が担当し、大城光恵氏が補作詞、小玉竜三氏が編曲を手がけた楽曲です。

平成の大合併における継承

平成期に実施された大規模な市町村合併において、宮崎市は周辺の田野町、佐土原町、高岡町、清武町を編入合併しました。この合併を進めるにあたり、各町との間で設けられた合併協議会では、市民歌の扱いについても協議が行われました。その結果、市民歌に関しては「宮崎市の制度に統一する」という方針で合意がなされました。この決定により、「南国の街 宮崎市」は、合併後の新しい宮崎市の市民歌として引き続き歌い継がれることになりました。

一方、合併により宮崎市に編入された旧町がそれぞれ持っていた町民歌や音頭については、地域文化の継承という観点から配慮がなされました。地域自治区が設置されている期間中は「自治区の歌」として、そして地域自治区が廃止された後も「地域の歌」として、地域の人々によって歌い継がれていくことが申し合わされました。例として、田野町には作詞：那須続、補作詞・作曲：中山大三郎による町民歌があり、清武町には作詞：石山久子、補作：黒木淳吉、作曲：森田公一による町民歌が存在していました。

これらの市民歌に関する歴史や情報は、主に宮崎市史編纂委員会が編纂した『宮崎市史 続編』や、中山裕一郎氏が監修した『全国 都道府県の歌・市の歌』といった文献に詳細が記されています。

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