南燕 (春秋)

南燕（なんえん）は、周朝時代に存在した諸侯国の一つであり、爵位は伯爵とされていました。国君は姞（きつ）姓を名乗り、その始祖は黄帝の末裔である伯鯈（はくちょう）と伝えられています。南燕の領土は現在の河南省新郷市延津県の北東部に位置しており、この地は秦・漢時代には燕県として知られていました。

『春秋左氏伝』には、南燕が春秋時代の歴史において重要な役割を果たしていたことが記されています。特に注目されるのは、「南燕の建国は召公奭（しょうこうせき）の北燕よりも早い」という記述です。この記述から、南燕が周初から存在し、召公奭が封じられた北燕よりも古い歴史を持つことがわかります。

南燕は、春秋時代を通じて周辺諸国との関係において様々な出来事に関わりました。例えば、魯の隠公5年には、衛の国が南燕の精鋭を用いて鄭を攻めました。また、桓公12年には、宋公と南燕が穀丘で同盟を結び、桓公13年には、紀侯（きこう）、鄭伯（ていはく）、斉侯（せいこう）、宋公、衛侯（えいこう）とともに戦に加わりましたが、この戦いで斉・宋・衛・南燕は敗北を喫しました。桓公18年には、王子克が南燕に亡命し、荘公19年には、衛と共に周を討伐したとされています。さらに、荘公20年には、南燕の君主である燕伯仲文（えんはくちゅうぶん）が鄭伯に捕らえられるという事件も起こりました。

宣公3年には、鄭の文公の妾に燕姞（えんきつ）という女性がいたという記録も残っています。これらの記録に登場する「燕」は、すべて南燕を指しており、召公奭の燕は「北燕」として区別して記述されています。このことから、南燕が春秋時代の歴史において重要な位置を占めていたことがわかります。

歴代の君主としては、初代の伯鯈と、燕伯仲文の名前が伝わっています。

南燕に関する歴史は、春秋時代の混乱の中で、周辺諸国との様々な関わりの中で展開していきました。その存在は、春秋時代の歴史を語る上で欠かせない要素の一つと言えるでしょう。

関連事項

燕

外部リンク

張京華《燕趙文化》之十：召公之治，得兆民和——有関周初召公封燕的疑問

もう一度検索