召公奭

召公奭（しょうこうせき）は、西周の時代に活躍した政治家であり、周王朝の建国に不可欠な役割を果たした功臣の一人です。姓は姫または姞、諱は奭とされています。彼は、太公望や周公旦と並び、周の建国を支えた中心人物として知られています。文王、武王、成王、康王の四代にわたり仕え、その長いキャリアを通じて周王朝の安定と発展に貢献しました。

召公奭は、召の地（現在の陝西省宝鶏市岐山県の南西）を領地として与えられたことから、「召公」または「周召公」、「召康公」、「召伯」などと称されました。武王による殷の打倒を補佐した功績により、燕（現在の河北省北部）に封じられ、都を薊（現在の北京市房山区）と定めました。しかし、自らは周王朝の中心地である鎬京（現在の陝西省西安市）に留まり、長男の克を燕に派遣しました。

成王の時代には、召公奭は三公という最高位の役職に列し、太保にも任じられました。周公旦と共に殷の旧領を二分し、陝塬（現在の河南省三門峡市陝州区）を境に、東側を周公旦が、西側を召公奭が統治しました。この分割統治は、周王朝の広大な領土を安定的に治める上で重要な役割を果たしました。

召公奭にまつわる有名な慣用表現として「甘棠の愛」があります。これは、立派な為政者に対して深い愛情と敬意を払うことを意味します。召公奭は、国内を巡回し、甘棠（かんとう）の木の下で人々の訴えを聞き、紛争を解決しました。彼の仁徳と善政を慕った人々は、その甘棠を大切にし、木を切ることをしなかったという故事に由来しています。このエピソードは、召公奭が民衆からいかに愛され、敬われていたかを物語っています。

召公奭を題材にした作品としては、宮城谷昌光の小説『侠骨記』（講談社、1991年）に収録された「甘棠の人」があります。この作品は、召公奭の人物像を鮮やかに描き出しており、彼の功績と人柄に触れることができます。

召公奭に関する歴史的な資料としては、『史記』の燕世家や『東洋歴史大事典』などが挙げられます。これらの資料は、彼の生涯や業績をより深く理解する上で有益です。

召公奭は、周王朝の初期において、政治家としてだけでなく、民衆の信頼を集める指導者として重要な役割を果たしました。彼の公平な裁きと民への愛情は、後世の政治家たちの模範となり、その功績は歴史に深く刻まれています。

もう一度検索