南郡 (中国)

南郡の歴史

南郡（なん-ぐん）は、中国にかつて存在した郡であり、その歴史は秦代にまで遡ります。現在の湖北省荊州市一帯に位置し、その領域は時代とともに変動しました。

秦代から前漢時代

南郡は、紀元前278年、秦の昭襄王が楚を攻撃して郢を占領した際に設置されました。この地域は秦の支配下に入り、南郡として統治されることとなりました。しかし、秦が滅亡すると、南郡の運命も大きく変化します。紀元前206年には、項羽によって臨江国となり、その後、漢の高帝によって再び南郡として復活しました。さらに、前漢の時代には、皇族の動向によって臨江国と南郡の間で数度その名称と体制が変更されました。

• - 紀元前278年：秦の白起が楚を攻撃し、郢を占領。南郡が設置される。
• - 紀元前206年：項羽が共敖を臨江王に立て、南郡は臨江国となる。
• - 紀元前202年：臨江国が滅亡し、再び南郡が設置される。
• - 紀元前155年：劉閼于が臨江王となり、南郡は再び臨江国となる。
• - 紀元前153年：劉閼于の死去により臨江国は廃止され、南郡が設置される。
• - 紀元前150年：劉栄が臨江王となり、南郡は再び臨江国となる。
• - 紀元前148年：劉栄の自殺により臨江国は廃止され、南郡が設置される。

前漢の時代には、南郡は荊州に属し、江陵・臨沮・夷陵など18県を管轄しました。当時の記録によると、前漢末には12万5579戸、71万8540人の人口を擁する地域でした。

後漢から南北朝時代

後漢の時代に入ると、南郡は一時的に南順郡と改称されましたが、後漢の成立とともに南郡に戻されました。後漢の南郡は、江陵や巫など17県を管轄しました。

晋の時代には、南郡の管轄県は11県に減少しました。南朝時代に入ると、宋と斉の時代を通して、管轄する県は6県とさらに縮小しました。

隋代

隋代になると、江陵を首都として後梁が成立し、江陵総管府が置かれました。隋が後梁を併呑した後も、江陵総管府は存続し、後に荊州総管府と改称されました。隋の時代、州を廃止して郡を置く制度変更により、荊州は南郡と改称され、10県を管轄しました。

唐代

隋が滅亡し唐の時代になると、蕭銑が滅亡したことで南郡は唐の荊州となり、南郡という呼称は歴史から姿を消しました。

南郡の変遷

南郡は、秦代から隋代にかけてその名称と領域を何度も変えながら、中国の歴史の中で重要な役割を果たしました。その変遷は、王朝の興亡や権力闘争、制度改革といった歴史の流れを反映しています。特に、前漢時代には、皇族の動向によって臨江国と南郡の間で名称と体制が頻繁に変更されたことは特筆すべき点です。

南郡に関わる史料

南郡の歴史を語る上で欠かせないのが、睡虎地秦簡（雲夢秦簡）です。これは、秦の南郡に属する県の官吏が残した竹簡であり、当時の社会制度や生活実態を研究する上で貴重な資料となっています。

南郡は、古代中国の地方行政制度を研究する上でも重要な事例であり、その歴史的な変遷は、中国の歴史を理解する上で欠かせない要素となっています。

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