南部重信

南部重信

南部重信（なんぶ しげのぶ）は、江戸時代前期から中期にかけての大名であり、陸奥盛岡藩の第3代藩主。南部氏の第29代当主にあたります。初代藩主・南部利直の五男として生まれました。地元では「花輪殿様」として親しまれています。

生涯

元和2年（1616年）に、初代盛岡藩主・南部利直の五男として、閉伊郡花輪村で生を受けました。父・利直が盛岡の外港として宮古の町を開くため滞在中、その身辺の世話をしていた地頭・閉伊花輪氏の娘・松が母です。

幼少期は閉伊氏の菩提寺である華厳院で過ごし、百姓の子らと分け隔てなく遊んだと伝えられています。慶安元年（1648年）には七戸家を継ぎ、七戸城主となります。寛文4年（1664年）に兄・重直が子をなさずに亡くなると、盛岡藩8万石を相続（弟の直房が八戸2万石を相続）。同年、将軍・徳川家綱に御目見えし、従五位下・大膳大夫に叙任されました。

天和3年（1683年）には従四位下に昇進し、10万石に高直しされました。この昇進には、天和2年の徳川家綱三回忌に際し、雨の中で傘も差させてもらえない従五位下の自身の身を「飛かねて上野の池の五月雨にみの毛もうすき五位の濡鷺」と歌に詠んだところ、将軍・徳川綱吉の耳に入ったという逸話が残っています（『南部史要』）。

元禄5年（1692年）に家督を長男・行信に譲り隠居し、元禄15年（1702年）に江戸で87歳で亡くなりました。

政策と人物

幼少期の経験から世情に明るく、家臣や領民に対して質素倹約を説き、仁政を施しました。また、歌を好み、飛鳥井雅章や岡本宗好に師事して和歌を学びました。八戸藩の分知後、領内の総検地を行い、増加した蔵入米を藩士の俸禄米に充てて士気を高めました。新田開発によって盛岡藩は10万石に復帰し、枯渇しかけていた金山に代わる銅山開発を推進。火災で荒廃した盛岡城の修復や、水害に悩まされていた北上川の治水事業など、様々な改革を行い、善政を敷いたため、重信の治世下における盛岡藩は比較的安定していたとされています。

系譜

父：南部利直（1576-1632）
母：慈徳院 - 花輪政朝の娘
正室：大智院 - 玉山秀久の娘
次男：七戸定信（1638-1663）
三男：南部行信（1642-1702）
長女：式姫 - 池田綱清正室
側室：長慶院 - 上田兵部の娘
四男：南部辰之助
五男：七戸英信（1658-1731）
次女：七姫 - 本多忠英正室後に有馬豊祐正室
側室：光樹院 - 服部氏
七男：南部政信（1668-1746） - 旗本麹町南部家初代
側室：蘭女 - 村木采女の娘
長男：七戸秀信（1635-1663）
側室：養春院 - 赤沢氏
十三男：七戸舜信（1682-1706） - 兄英信の養子
女子：慶姫 - 家臣八戸勘解由利戡室
女子：恵岐姫 - 家臣桜庭兵三郎直良室
側室：きん、松貞院 - 新渡氏
八男：南部萬之助
十一男：七戸愛信（1675-1732）
男子：南部勝信（1669-1732）
側室：沢、浄生院 - 栃内氏
十男：南部通信（1673-1716）
側室：小督、峯光院 - 那波氏
十二男：坪内定信 - 坪内惣兵衛の養子
側室：穂高彦右衛門の娘
側室：浄生院 - 栃内金右衛門の妹
生母不詳の子女
九男：南部千之助

参考文献

一ノ倉則文編 『用語 南部盛岡藩辞典』東洋書院、1984年
大正十三造『南部盛岡藩史略』杜陵印刷、1983年

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