南阿蘇鉄道MT-3000形気動車

南阿蘇鉄道MT-3000形気動車は、1993年（平成5年）と1998年（平成10年）に各1両が製造された、南阿蘇鉄道の気動車です。2両は外観や内装が大きく異なりますが、走行装置は共通で、同形式として扱われています。

概要

1986年（昭和61年）4月に国鉄高森線を第三セクターに転換して開業した南阿蘇鉄道が、輸送力増強のために導入した新潟鐵工所製の気動車です。MT-3001は、秋田内陸縦貫鉄道AN-8900形や高千穂鉄道TR-300形に似た非貫通型の前面形状ですが、両運転台で開閉式窓を備えている点が異なります。一方、MT-3010は両運転台で正面貫通型、レトロ調の外観が特徴です。エンジンは、新潟鐵工所製のDMF13HSディーゼルエンジンを搭載し、出力は184kW（250PS）に設定されています。2両ともトイレは設置されていません。MT-3001には「おおるりしじみ」、MT-3010には「宝くじ号」の愛称が付けられています。MT-3001は2002年に、MT-3010は2013年にそれぞれ車体塗装が変更されています。

車体

2両とも両運転台ですが、前面形状は大きく異なります。MT-3001は非貫通型で、秋田内陸縦貫鉄道AN-8900形や高千穂鉄道TR-300形に似たデザインです。MT-3010は正面貫通型で、レトロな雰囲気を醸し出しています。乗務員室は左側に設けられ、乗務員用扉があります。客用扉は片側2箇所で、MT-3001では運転室がない側は車端に、MT-3010では小窓を挟んだ位置にあります。運転室がある側は、2両とも乗務員用扉の直後に設置されています。客用扉の幅はMT-3001が850mm、MT-3010が900mmです。窓は上段固定、下段上昇式で、幅1,200mmのものが6組設置されています。MT-3001では、運転室がない側の客用扉後ろに400mm幅の固定窓があり、排気管のある位置の開閉窓は幅800mmです。2両ともトイレは設置されていません。

MT-3001の塗装はシルバーをベースに、グリーンとパープルの帯、阿蘇五岳が水面に映るイメージがデザインされています。MT-3010はモスグリーンを基調に、窓下にゴールドの枠、中央には阿蘇の野花のイラストが描かれています。屋根上にはダミーのモニタールーフが設けられています。

登場時のMT-3001の車内はセミクロスシートで、中央部に4人掛けボックスシートが配置されていましたが、2002年にロングシートに改造されました。MT-3010は4人掛けボックスシートを基本とし、車端部は2人掛けとなっています。内装は木目調で、天井には丸形灯具、窓側上部にはすずらん灯が設置され、レトロな雰囲気を演出しています。2両ともワンマン運転に対応した機器を備えています。

走行装置

2両の走行装置は共通で、エンジンは新潟鐵工所製のDMF13HSディーゼルエンジンを1基搭載しています。定格出力は184kW（250PS）/1,900rpmです。動力は、新潟コンバーター製のTACN-22-1105液体変速機を介して、2軸駆動の台車に伝達されます。台車は上枕空気ばね式、軸ばね式軸箱支持のNP125D/Tが採用されています。制動装置は、排気ブレーキと機関ブレーキを併用するDE1A自動空気ブレーキです。

空調装置

暖房装置はエンジンの排熱を利用した温風式です。冷房装置は、能力24.0kW（20,600kcal/h）のR134-Aが設置されています。

車歴・運用

南阿蘇鉄道は、国鉄高森線を転換して1986年4月に開業しました。当初は3両の気動車で運行していましたが、予備車として国鉄キハ52形を購入し、MT-2100形として使用していました。しかし、老朽化が進み、ワンマン運転にも対応していなかったため、合理化のために新製車両への置き換えを決定しました。1993年12月にMT-3001が製造されました。その後、1999年に熊本県で開催された「くまもと未来国体」にあわせて輸送力を増強するため、1998年3月に日本宝くじ協会の助成を受けてMT-3010が製造されました。

国体終了までは、第2・第4土曜日のみの運転でしたが、終了後に通常運用に投入されました。2002年度にはMT-3001の外部塗装が変更され、車内もロングシートに改造されました。2013年度にはMT-3010の外部塗装がダークピンクに変更されました。

2023年7月22日から約1年間は、全線運転再開を記念して、MT-3010が漫画『ONE PIECE|ONE_PIECE』に登場する「サウザンドサニー号」をモチーフにした「サニー号トレイン」として運行されました。

運行当初は木曜日から日曜日と祝日に、立野～高森間を1日3往復していましたが、2024年の改正により、金曜日から日曜日と祝日に、立野～高森間を1日1往復（全席自由席・予約不要）運行しています。また、土曜日・日曜日と祝日には、トロッコ列車と連結して立野～高森間を1日1往復（全席指定席・要予約）運行しています。

2024年には、MT-4000形の追加増備に伴い、MT-3001が同年2月11・12日に行われたラストランツアーをもって2003Aとともに運用を離脱しました。

参考文献

寺田祐一『私鉄気動車30年』JTBパブリッシング、2006年。
『鉄道ピクトリアル』各号
『レイルマガジン』各号
『私鉄車両編成表 2017』交通新聞社、2017年。
ONE PIECE|ONE_PIECE 熊本復興プロジェクト公式サイト
マイナビニュース記事

もう一度検索