博徒シリーズ

『博徒』シリーズの全貌

『博徒』シリーズ（ばくとシリーズ）は、1964年から1971年にかけて東映が製作した10本のヤクザ映画です。本シリーズは鶴田浩二を主演に据え、時代設定や舞台が異なる独立した作品群であり、その中に明確なストーリーのつながりは存在しません。シリーズの制作は、当時の日本映画界に大きな影響を与え、鶴田浩二を任侠スターとして確立させることに寄与しました。

シリーズの概要

本シリーズは、任侠映画の先駆けとして位置づけられ、岡田茂と俊藤浩滋という二人のプロデューサーは新たな映画路線を開拓しました。岡田は1963年の『人生劇場 飛車角』により任侠映画の方向性を見出し、その後、東映京都撮影所に戻り、本シリーズの企画をスタートさせました。彼は観客層を意識した戦略を立て、特に大人向けの映画で成人層をターゲットとして設定しました。これにより、映画業界全体が時代劇から任侠映画へとシフトし始めます。

『博徒』シリーズは、初期の作品においては小沢茂弘監督による伝統的な任侠スタイルが特徴でしたが、シリーズ後期には深作欣二や佐藤純彌といった監督による現代的でドライなスタイルが導入されました。監督陣はそれぞれの個性を持ち込み、時代に応じた物語を紡ぎます。

制作の背景と経緯

1963年、岡田茂は東映東京撮影所の所長として映画の任侠路線への転換を試みました。そして、翌1964年に京都撮影所への復帰を果たします。岡田は新しい企画の一環として、任侠映画を製作することを決定し、これが『博徒』シリーズ誕生の背景となります。彼は任侠映画が持つ魅力を最大限に活かし、また経済的なメリットも考慮した上で、シリーズ化が容易であることを指摘しました。

このような思惑を持ってスタートした本シリーズは、1964年7月に公開された『博徒』で大ヒットを収め、その後も続けて『監獄博徒』や『博徒対テキ屋』が公開されいずれも成功を収めました。この成功を受け、岡田は独自のプロデューサー体制を確立し、次々にヒットを飛ばす任侠映画を生み出しました。

映画の内容と影響

この映画シリーズが注目すべき点は、リアリズムの重視です。『博徒』の制作陣は、本物のヤクザからの取材を行い、本引き賭博や渡世のしきたりを忠実に映像化しました。映画試写時、観客からは「これは映画ではない！」という声が上がるほど、迫真のリアルさを追求していたのです。また、この作品群により「博徒」や「テキ屋」という言葉が一般化しました。

シリーズが進むにつれて、岡田と俊藤の関係も強固なものとなります。俊藤は、映画がヒットすることで徐々に力をつけていき、共に日本映画界の任侠映画をリードしていきました。しかし、後の時代には興行成績が落ち込み、岡田は「実録映画」への転換を決意し、これにより俊藤との確執が生まれます。

エピソードと評価

『博徒』シリーズは、その内容や制作背景が非常に興味深いもので、また文化的な影響を与え続けています。第4作『博徒七人』では、脚本家の意向により身障者を登場させたことが議論を呼び、未だにソフト化されていない「カルトムービー」として知られています。これらの作品は、日本映画の一端を形成し、今なお多くのファンに愛されています。

各作品の詳細な情報は以下の通りです。

• - 第1作『博徒』（1964年7月11日公開）
• - 第2作『監獄博徒』（1964年10月21日公開）
• - 第3作『博徒対テキ屋』（1964年12月24日公開）
• - 第4作『博徒七人』（1966年7月9日公開）
• - 第5作『三人の博徒』（1967年12月1日公開）
• - 第6作『博徒解散式』（1968年2月9日公開）
• - 第7作『博徒列伝』（1968年12月28日公開）
• - 第8作『札つき博徒』（1970年9月9日公開）
• - 第9作『博徒外人部隊』（1971年1月12日公開）
• - 第10作『博徒斬り込み隊』（1971年10月14日公開）

このように、『博徒』シリーズはただの映画だけでなく、社会現象とも言える重要な位置を占めているのです。

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