印支弥

印支弥とは

印支弥（いきみ、生没年不詳）は、6世紀前半に任那日本府で活動していた日本人官吏であり、印岐弥とも呼ばれています。彼は百済と深い関係を持ち、その地で官職についていたことが目されています。

聖明王との関係

544年、印支弥は新羅の侵攻を受けていた百済の聖明王からの要請により、日本に派遣された経歴を持ちます。このときの背景には、新羅の侵略を阻止しようとする政治的な駆け引きがありました。聖明王は日本の支援を求め、印支弥の存在が重要な役割を果たしたのです。

倭系百済官僚としての存在

金鉉球や李在碩の見解によれば、印支弥は日本人でありながらも百済の官僚として仕えていたとされています。このことは、『日本書紀』に記されている聖明王の上表文に明記されている内容を支持するものです。具体的には、「於印支弥後来」という表現が、百済側からの派遣を示していると解釈されています。

政治的意図と動き

鈴木英夫は、印支弥が百済派遣の官人であるなら、彼が新羅と通じて母国である百済を攻撃しようとしていたことが示唆されると指摘しています。印支弥は百済王権に仕える傍ら、倭王権の臣僚としても活動していたとされています。このように、彼は両国の間で微妙なバランスを保ちながら、政治的な道を模索していた可能性が高いです。

批判的な視点

李在碩は鈴木の解釈を評価しつつも、印支弥が百済王の官人として派遣されたことを否定することはできないと述べています。彼の主張に従うならば、印支弥は百済との密接な関係を持ちながらも、厳密には百済の官人ではなかった可能性が高いということになります。しかし、聖明王の公文書により、彼が百済からの正式な派遣を受けていたことは間違いないと考えられるでしょう。

結論

印支弥という人物は、任那日本府における官吏としての活動を通じて、百済との関係において非常に重要な役割を果たしていました。彼の存在は、歴史的な文脈における両国間の外交や政治的な動向を理解する上で欠かせない要素と言えるでしょう。彼のような官僚により、任那地域における日本と百済の関係は一層複雑に交錯していったのです。

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