即決裁判手続

即決裁判手続とは

即決裁判手続（そっけつさいばんてつづき）とは、日本の刑事訴訟法に基づく特別な手続きであり、迅速な裁判を実現することを目的としています。この手続きは、2004年に改正された刑事訴訟法に盛り込まれ、2006年10月2日から施行されています。

手続の概要

この手続きは、特定の条件を満たす事件に対して適用されます。具体的には、検察官が公訴を提起しようとする事件の中で、死刑、無期懲役、または短期1年以上の懲役あるいは禁錮に該当しない軽微な事案が対象です。事件が明白であり、証拠調べが迅速に終わる見込みがあれば、被疑者の合意を条件として、検察官は書面で即決裁判手続の申し立てを行うことができます（刑事訴訟法第350条の16）。

裁判の冒頭手続において、被告人が起訴状に記載された犯罪事実に対して自ら有罪であることを表明した場合、裁判所は特定の条件を除いて即決裁判手続を開始する決定を下します（同法第350条の22）。この手続きにおいては、被疑者を守るための弁護人が必要とされます。このため、被害者なくしては開廷できず（第350条の23）、証拠調べの際には伝聞法則の適用が原則として免除されます（第350条の27）。また、検察官の冒頭陳述が省略されることもあり、裁判所の裁量が広がっています（第350条の24）。

ただし、被告人の自白のみで有罪とされることはなく（第319条2項）、被疑者と弁護人は第一審判決が下されるまでいつでも同意を撤回することが可能です。したがって、この手続きは司法取引には該当しません。

判決の流れ

即決裁判手続においては、判決は原則として即日で言い渡されます（第350条の28）。また、有罪判決が下された場合でも、必ず全ての執行猶予が付帯されます（第350条の29）。この判決に対しては、事実に誤認があったとしても控訴はできないと定められています（控訴については第403条の2第1項、上告については第413条の2）。

最高裁第三小法廷（藤田宙靖裁判長）は、即決裁判手続に関する控訴申立ての制限が憲法に違反しないことを確認し、この制度には合理的な理由が存在すると判示しました。裁判官全員の意見として、即決裁判手続の正当性が認められましたが、被告人に対して十分な説明がされていない可能性も指摘されており、弁護人と被告人間の意思疎通の重要性が強調されています。

現在の問題点

最近の運用では、即決裁判手続が適用される事件の範囲が拡大し、傷害事件や詐欺事件など被害者が存在する犯罪にも広がっています。これに対し、専門家の中からは、加害者が罪と向き合わず、被害弁償をしない傾向が生まれるとの懸念が示されています。実際に、神戸市で発生した器物損壊事件では、被告が有罪判決を受けたにもかかわらず、被害弁償を行わず失踪した例があり、専門家の懸念が現実となるケースもみられています。

このような背景から、即決裁判手続が本来の目的を果たすためには、制度の見直しや運用の改善が求められる声も高まっています。

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