厚藤四郎

厚藤四郎について

厚藤四郎（あつしとうしろう）は、鎌倉時代に作られたとされる日本刀（短刀）で、国宝に指定されています。現在は東京国立博物館に所蔵されており、その優美な姿を一般公開されています。

刀工と名前の由来

この刀は、山城国粟田口派の刀工、藤四郎吉光によって作られました。吉光は、特に短刀や剣の制作において名手として知られています。厚藤四郎の最大の特徴は、その名の由来にもなった刀身の厚さです。一般的な刀の重ねが約6mmであるのに対し、この刀は約11mmと非常に厚く作られています。この特異な厚みが、この刀の大きな特徴であり、その名の由来となっています。

足利将軍家から豊臣家へ

厚藤四郎は、もともと足利将軍家の所蔵品でした。1487年の長享・延徳の乱では、9代将軍足利義尚が佩刀として使用したと伝えられています。室町幕府滅亡後、この刀は堺の豪商を経て本阿弥祐徳の手に渡り、その後、豊臣秀吉の家臣である一柳直末に譲られました。直末は小田原征伐で戦死しますが、彼の死後、厚藤四郎は黒田官兵衛に引き継がれました。

豊臣秀次と山田三十郎

その後、官兵衛は厚藤四郎を豊臣秀次に献上しました。しかし、秀次は秀吉の疑いを受け、高野山で自害を強いられます。秀次は死の直前、近臣の山田三十郎にこの刀を与え、三十郎もまた厚藤四郎で切腹し、主君に殉じました。この出来事は、厚藤四郎の歴史において、悲劇的な逸話として語り継がれています。

徳川将軍家へ

山田三十郎の切腹後、厚藤四郎は秀吉に没収され、毛利秀元に贈られました。その後、秀元の嫡孫である綱元の代に、徳川家綱の願いにより献上され、以後、江戸時代を通して徳川将軍家に伝来しました。8代将軍徳川吉宗が編纂した名刀目録『享保名物帳』にもその名が記載され、将軍家の重要な所蔵品の一つとして扱われました。

明治時代以降

明治時代になると、厚藤四郎は田安徳川家に伝わりました。1938年には、当時の当主である徳川達孝伯爵によって、東京国立博物館に納められ、現在に至ります。1955年に重要文化財、1956年には国宝に指定され、その歴史的価値と美術的価値が認められています。

厚藤四郎の作風

厚藤四郎は、刃長約21.8cmと短く、平造りの刀身を持っています。地鉄は板目がよく現れ、地沸、地景が入ります。刃文は中直刃が主体で、焼出しには小湾れが見られ、互の目が焼かれています。匂口が深く、足、葉、金筋といった刃中の働きが盛んです。茎は生ぶで、茎先は栗尻、鑢目は勝手下りとなっています。指表には「吉光」の二字銘が刻まれています。これらの特徴から、この刀が吉光の作であることが明らかであり、その優れた技術が伺えます。

まとめ

厚藤四郎は、鎌倉時代の刀工吉光の作として、その優れた技術と美しい姿で知られる短刀です。足利将軍家、豊臣家、そして徳川家と、歴史上の重要な人物たちの手を経て現代に伝えられました。その存在は、日本の刀剣史における重要な位置を占め、多くの人々を魅了し続けています。

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