一柳直末

一柳直末の生涯

一柳直末（ひとつやなぎ なおすえ）は、戦国時代から安土桃山時代にかけての武将で、豊臣秀吉に早くから仕え、その側近として活躍しました。通称を末安（すえやす）とも呼ばれます。弟には同じく武将として活躍した一柳直盛がいます。

生い立ちと秀吉への仕官

美濃国厚見郡西野村（現在の岐阜県岐阜市西野町）の住人、一柳直高の子として生まれました。生年は諸説あり、1553年生まれとする説と、1546年生まれとする説があります。母は稲葉一鉄の姪にあたるとされています。

1570年、織田信長の家臣であった木下秀吉（後の豊臣秀吉）に仕官しました。1573年の小谷城の戦いでは武功を挙げ、秀吉から黄母衣衆の一人に選ばれました。この時、250貫の知行と感状を与えられたとされています。1578年には播磨国で2500石の知行を得て、弟の直盛を呼び寄せて家臣としました。

秀吉の天下統一に貢献

1579年、秀吉の因幡国侵攻に従軍。1580年には父の遺領を相続しました。1582年の備中高松城攻めや山崎の戦いにも参加し、その武勇を示しました。同年末には山城国槇島城主となり1万石、その後近江国勢田城に移り1万5000石を領しました。1583年の賤ヶ岳の戦いでは、軍奉行を務め、先駆け衆として弟の直盛や稲葉清六が活躍しました。

豊臣政権下での活動

1584年の小牧・長久手の戦いでは、竹ヶ鼻城を攻略し、その功績により城を与えられました。1585年の紀州征伐、四国攻め、佐々成政攻めにも従軍しました。同年、秀吉の甥である豊臣秀次が近江国に移封されると、田中吉政、中村一氏、堀尾吉晴、山内一豊らと共に秀次の宿老（年寄）に任命されました。この際、美濃国大垣城に2万5000石を領し、八幡山城の秀次を補佐する役割も担いました。

大垣城主としての任についた背景には、前任の加藤光泰が秀吉の勘気を蒙ったことがあります。直末が光泰の罪状を記した書状は、部将たちへの公開訓戒状として知られています。また、この書状は秀吉の「唐国」征服の意思を示すものとしても注目されています。同年11月29日の天正地震では大垣城が倒壊・炎上しましたが、直末は辛くも難を逃れました。この地震で浅井攻めで得た感状を失ったと伝えられています。

1585年には従五位下伊豆守に叙任され、1586年には妙心寺に塔頭の大通院を開基しました。1589年には賀留美で5万石を知行しました。

山中城での壮絶な戦死

1590年、小田原征伐に参加し、山中城攻めで先鋒を務めました。しかし、間宮康俊の軍勢の銃弾に当たり、45歳（あるいは38歳）で戦死しました。直末の戦死の報を受けた秀吉は、深く悲しみ、その死を惜しんだと伝えられています。直末の首は、敵の手に渡らないよう従僕が持ち帰り、山中城近くの長久保村に埋葬され、現在も「首塚」が残っています。

直末の死後、秀吉は直末の遺児である松千代に遺領の一部を相続させ、残りを弟の直盛に与えました。しかし、松千代は後に黒田家に引き取られ早世しました。

人物像と逸話

直末は秀吉からの信頼が厚く、「子飼いの家来」とも評される人物です。秀吉からの多くの書状が残っており、その関係の深さを物語っています。

また、姫路城の改修時に縄張りをめぐって秀吉と意見が対立し、直末の意見通りに作られた曲輪が「市助曲輪」と呼ばれたという逸話が残っています。彼は文化的な面でも造詣が深く、名刀「厚藤四郎」を所持していたことでも知られています。

家族と親族

妻は黒田職隆の娘であり、黒田孝高の異母妹にあたります。直末との間に一男二女をもうけましたが、直末の死後、黒田家に戻り、再婚しました。息子である松千代は、黒田家に引き取られましたが、早世しました。弟の一柳直盛は、兄の死後、大名として勢力を築きました。

一柳直末の墓所

直末の首塚は、現在の静岡県駿東郡長泉町にあります。遺骸は当初、戦死した場所に埋葬されましたが、後に宗閑寺に移葬されました。宗閑寺には、直末の事績を記した石碑も建てられています。

まとめ

一柳直末は、戦国時代末期から安土桃山時代にかけて、豊臣秀吉に仕え、数々の戦で武功を挙げた武将です。その生涯は、秀吉の天下統一に大きく貢献し、その死は秀吉に大きな衝撃を与えました。彼の存在は、一柳家の歴史においても重要な位置を占めています。

直末の生涯は、戦国時代の武将の生き様を示すとともに、その死が後の歴史にどのような影響を与えたのかを教えてくれます。

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