足利将軍家

足利将軍家とは

足利将軍家は、清和[[源氏]]の流れを汲む足利氏の宗家であり、室町幕府の将軍を代々世襲した家です。初代将軍足利尊氏から15代将軍足利義昭まで、約230年にわたり政権を担いました。歴代将軍は諱に「義」の字を通字として用いました。

足利将軍家の成立

足利氏は、源氏の中でも河内源氏の嫡流にあたる名門です。源頼信、源義家などの武将を輩出し、東国を拠点として武家の棟梁としての地位を確立しました。足利氏の始祖である源義康は、下野国足利荘に住み着き、その地名を名字としました。

鎌倉時代には、足利義兼が源頼朝と縁戚関係を結び、幕府内で重用されました。源氏将軍が滅亡した後も、足利氏は武家の名門として尊敬を集めましたが、執権北条氏からは警戒されました。それでも、代々の当主は北条氏との縁戚関係を維持し、他の名族が粛清される中でも、その地位を保ち続けました。

後醍醐天皇による討幕運動が起こると、足利尊氏は幕府軍として出陣しましたが、後に朝廷側へ転じ、建武の新政を樹立しました。しかし、後醍醐天皇の政治に不満を抱いた尊氏は、光厳上皇の院宣を受け、北朝を樹立し、自ら征夷大将軍となりました。これにより、足利氏が将軍家となる新たな武家政権が誕生しました。

室町殿

足利将軍は、当初「鎌倉殿」と呼ばれていた時期もありましたが、足利義満が京都の室町に邸宅を構えて以降、将軍の邸宅、及び将軍そのものを「室町殿」と呼ぶようになりました。この「室町殿」は、後の室町幕府という名称の由来にもなっています。

室町殿は、必ずしも将軍であるとは限りませんでした。例えば、足利義満や足利義持は将軍職を譲った後も、室町殿として政務を執り続けました。応仁の乱の際には、朝廷と幕府の機能が全て室町殿に集約され、東軍の拠点となりました。

公家としての足利将軍家

足利義満の時代になると、足利将軍家は朝廷内でもその地位を高め、太政大臣にまで昇進しました。義満以降の将軍も、摂家や清華家と同等の家格を得て、公家社会の一員として活躍しました。特に、将軍家と婚姻関係を結んだ日野流や勧修寺流の公家が、将軍家の家政を補佐しました。

応仁の乱後、幕府が衰退すると、朝廷との関係に変化が生じました。将軍家が分裂し、朝廷への財政援助も望めなくなると、朝廷は双方の陣営からの任官申請を機械的に処理するようになり、将軍家の内紛が朝廷に影響するのを回避しました。

しかし、足利将軍家の分裂は、摂関家にも影響を及ぼしました。近衛家が義澄系と、九条家が義稙系と結びつき、政治対立が激化しました。将軍家の勢力によって、摂関家の勢力も左右されるという状況になりました。

その後、永禄の変を経て、足利義昭が織田信長に追放され、室町幕府は事実上滅亡しました。しかし、足利将軍家の分裂は、その後の関白相論にも影響を残しました。

足利将軍家の連枝

足利将軍家の連枝としては、鎌倉公方家が有名です。しかし、室町時代前期に幕府が公式に認めていた御連枝は、足利義満の弟である満詮の系統と、息子の義嗣の系統だけでした。これらの系統は早い時期に断絶してしまったため、足利義量の没後、僧であった義持の弟を還俗させ、御連枝として継承することで、足利将軍家の断絶を回避しました。

鎌倉公方家

初代鎌倉公方となった足利基氏は、尊氏の四男で、関東地方を統治しました。鎌倉公方家は、後に古河公方と名乗り、歴代公方は「氏」の字を通字とし、将軍から偏諱を受けるのが慣例でした。

鎌倉公方家からは、足利満兼、足利持氏、足利政氏など、多くの公方が輩出されました。しかし、将軍家との対立や内紛により、次第に勢力を失っていきました。

御一家

足利将軍家は、足利氏の一門や庶家を御一家衆として遇し、幕府の要職を任せました。吉良家や今川家は、足利宗家を継承する資格のある家系とされていましたが、実際に宗家を継承した例はありません。渋川家や石橋家は、将軍家連枝として高い家格を誇りました。

斯波家は、足利氏の一門の中でも別格の格式を持っていましたが、御一家衆には含まれませんでした。これは、幕府が斯波家の勢力を牽制しようとしたためと考えられています。

足利将軍家は、武家政権の頂点に立ち、日本の歴史に大きな影響を与えました。しかし、応仁の乱や内紛により勢力を失い、織田信長によって滅亡しました。しかし、その血脈は、現代にも受け継がれています。

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