原子燃料工業

原子燃料工業株式会社

原子燃料工業株式会社（げんしねんりょうこうぎょう、英称: Nuclear Fuel Industries,Ltd., 略称: NFI）は、日本の主要な原子燃料製造企業です。1972年7月、日本の大手電機メーカーである住友電気工業と古河電気工業が、それぞれの原子燃料関連事業部門を統合して設立されました。本社は東京都港区に所在します。現在、東芝エネルギーシステムズ株式会社の完全子会社として、その傘下にあります。

事業内容

NFIの事業の中核は、原子力発電所で使用される原子燃料の製造とその関連サービスです。特筆すべきは、国内で商業運転されている主要な軽水炉である加圧水型原子炉（PWR）と沸騰水型原子炉（BWR）の両タイプに対応する原子燃料の成形・加工を一手に担う、日本で唯一の企業である点です。これにより、国内の電力会社に対して安定的な燃料供給を支える重要な基盤となっています。

軽水炉燃料のほかにも、次世代炉開発に関わる燃料や部材の製造も行っています。具体的には、高い安全性と熱効率が期待される高温ガス炉向けの燃料や、将来の資源有効利用を目指す高速増殖炉に使用される特殊な部材の製造も手掛けています。

主要な事業拠点としては、大阪府泉南郡熊取町に位置する熊取事業所と、茨城県那珂郡東海村にある東海事業所があります。熊取事業所は、主に加圧水型原子炉（PWR）用燃料の成形・加工を専門としています。かつては住友電気工業の工場の一部としてその歴史をスタートさせました。この事業所には、NFI照射サービス室も併設されており、ここでは原子力技術で培われた知見を応用し、電子線を用いた医療機器の滅菌処理や、様々な材料への照射加工サービスを提供しています。

一方、東海事業所は、沸騰水型原子炉（BWR）用燃料と高温ガス炉用燃料の製造を担当しています。日本の原子力研究開発の中心地である東海村に立地しており、設立は1980年と比較的新しい事業所です。過去には、新型転換炉（ATR）という特殊な炉心を持つ原子炉向けの燃料製造も行っていました。

沿革

原子燃料工業株式会社の歴史は、日本の原子力開発の進展と共に歩んできました。

1972年7月: 住友電気工業と古河電気工業の原子燃料事業が統合され、会社が設立されました。
1980年1月: 茨城県東海村に東海製造所（現・東海事業所）の操業が開始され、BWR燃料製造能力が確立されました。
1999年4月: 熊取事業所にNFI照射サービス室が開設され、電子線照射事業が開始されました。
2009年5月: 東芝グループ傘下のウェスティングハウス・エレクトリックが、主要株主であった住友電気工業と古河電気工業から株式を取得し、筆頭株主となりました。これは、グローバルな原子力産業再編の流れを受けたものです。
2018年6月: ウェスティングハウス・エレクトリックの親会社である東芝エネルギーシステムズ株式会社の完全子会社となり、現在に至る資本構成が確立されました。
2021年: グループ内の効率化を図るため、子会社であった東邦エンジニアリング株式会社を吸収合併しました。

主な出来事

企業活動に関連する特筆すべき出来事もいくつか報告されています。

2023年11月22日: 原子力規制委員会の会合において、熊取事業所の施設で発生した事案が報告されました。長期間にわたり、排気ダクトの内部に約170キログラムにも及ぶウラン粉末が堆積していたことが明らかになりました。この堆積は26年間にもわたっていたとされています。この事案については、外部への放射性物質の漏洩や、事業所の従業員への健康影響は確認されていないと原子力規制委員会に報告されました。

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