新型転換炉

新型転換炉について

新型転換炉（Advanced Thermal Reactor, ATR）は、原子炉の一種であり、日本で開発された核燃料の多様性を追求するための技術です。これにより、将来的にはより高い効率性が期待されています。開発は、旧動力炉・核燃料開発事業団によって推進され、実用化を目指して進められていました。

開発の経緯

1970年に、福井県敦賀市に原型炉「ふげん」が建設されました。このプロジェクトは、新型転換炉の考案を基にしており、続いて青森県下北郡大間町での実証炉建設が計画されていました。しかし、1995年に電力事業者が高コストを理由に実証炉の採用を拒否すると、この計画は全て中止されることとなりました。実証炉の建設費用は、1984年には3960億円と予想されていたものの、建設拒否が確定した1995年には5800億円に増加していました。

構造と特長

新型転換炉は、重水を減速材とし、沸騰軽水が冷却材として機能する圧力管型の原子炉です。重水はカランドリアタンクという形状のタンクに封入されており、その内部は縦に穴が開いています。燃料集合体はそれぞれ圧力管に封入され、複数の冷却ループに組み合わされています。制御棒はタンクの上部から挿入され、燃料の交換は圧力管の下部から行います。この方式により、冷却材である軽水が圧力管の下部から流入し、燃料棒の熱を奪って沸騰し、蒸気を発生させます。この蒸気はスムーズに蒸気タービンを回し、その後復水器で冷却された後、原子炉に戻されます。

この原子炉の大きな特長の一つが、運転中でも燃料を交換できる「運転中燃料交換（On Power Refueling）」が可能である点です。これにより、燃料棒の燃焼度に応じた効率的な燃料配置が可能となり、稼働率の向上が期待できます。また、CANDU炉とは異なり、新型転換炉は重水を減速材としてのみ使用し、高圧冷却系と常圧重水系を分けることで高価な重水の漏れを防ぐ設計になっています。

核燃料の利用

核燃料としては、天然ウラン、プルトニウムを添加した天然ウラン（プルトニウム富化ウラン燃料）、微濃縮ウラン、二酸化ウランと二酸化プルトニウムの混合酸化物燃料（MOX燃料）などが使用されます。全ての燃料棒をプルトニウム燃料とするフルMOXも選択可能です。このような多様な燃料の使用が可能であるため、製造コストを抑えつつ、濃縮工程で排出される劣化ウランの量も減少させることが可能です。また、核燃料の再処理や高速増殖炉で生産されたプルトニウムの有効利用の面でも期待されています。

さらに、名前に含まれる転換比（ウラン238がプルトニウムに転換する割合）は、軽水炉と比較して高い数値を示しており、これにより使用済み核燃料から得られるプルトニウムの量が増加します。これにより、燃料利用効率の向上が期待されています。新型転換炉は、高い性能と効率性をもたらすことが期待されながらも、経済的な課題も抱えている技術であると言えます。

もう一度検索