原富太郎

原 富太郎（はら とみたろう）

原富太郎は1868年に美濃国で生まれ、昭和14年に逝去した日本の著名な実業家であり、美術品の収集家、茶人としても広く知られています。彼は「三溪」との号を持ち、特に美術への情熱や作品の収集は彼の活動の大きな側面となっています。

生い立ちと教育

彼は青木久衛の長男として生を受け、小学校教育を終えた後、儒学の野村藤陰や草場船山からの学びを通じて、深い教養を身につけました。その後上京し、東京専門学校（現在の早稲田大学）で政治学と経済学を学びました。教育の分野にも貢献し、跡見女学校で教師としての経験もあります。

実業界への進出

1892年、原は家業を継ぐために、横浜の豪商の家系である原家に嫁いだ原屋寿と結婚しました。神奈川の六浦荘村を拠点に絹貿易を通じて富を築きました。また、富岡製糸場を中心に製糸工場を持ち、製糸業にも関与しました。1915年には帝国蚕糸の社長に就任し、1920年には横浜興信銀行の頭取にまで昇進しました。

美術品の収集と影響

美術品の収集は彼の人生において重要な役割を果たしました。25歳頃から始まったコレクションは、のちに5000点以上に達し、没後には各地の美術館や他の収集家に分けられました。彼は日本や中国の古美術品、特に書画や茶道具を集め、また同時代のアーティストたち、たとえば小林古径や前田青邨、横山大観らの作品も購入・支援しました。彼はこれらの画家たちのパトロンとしても知られ、生活費の援助などを行っています。

2019年に行われた「横浜美術館開館30周年記念 生誕150年・没後80年記念 原三溪の美術 伝説の大コレクション」では彼の収集した美術品が展示され、その影響力を改めて知る機会となりました。

三溪園の設立

横浜本牧には三溪園を設け、京都や鎌倉から古い建物を移築しました。1906年に開園した際には、直筆の門札「遊覧御随意」が掲げられ、多くの画家たちを招いて美術について語らう場となりました。岡倉天心やラビンドラート・タゴールとの交流もあり、彼らの影響を受けた彼の茶人としての活動は、彼の美術への情熱と相まって生涯を通じて続きました。

復興活動と晩年

1923年の関東大震災後には復興活動に尽力し、横浜市復興会や貿易復興会の会長として私財を投じました。震災により収集品に関する書籍『三渓帖』の版下が焼失し、刊行が中止されるという不運にも見舞われましたが、彼の収集品は戦後、横浜市に譲渡され、現在は公益財団法人三溪園保勝会によって保存されています。

家族と遺産

原富太郎には、子息の原善一郎を始めとする子どもたちがいました。彼の影響は今日においても色濃く残っており、多くの美術愛好者や歴史の研究者たちに影響を与え続けています。美術品や茶道具の収集を通じて、近代日本の文化の発展に寄与した彼の功績は、今なお評価されています。

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