原為一

原為一(はらためいち)は、1900年10月16日、香川県に生まれました。1921年7月、海軍兵学校を49期で卒業、翌年には海軍少尉に任官。水雷学校高等科を経て、駆逐艦「秋風」「吹雪」「韓崎」で水雷長を務めるなど、順調にキャリアを積みました。

1933年11月には海軍少佐に昇進。その後も「夕凪」「長月」「綾波」など、複数の駆逐艦の艦長を歴任し、着実に経験を積み重ねていきます。太平洋戦争が始まると、原は駆逐艦「天津風」の艦長として戦火に身を投じました。

戦況の激化とともに、原のキャリアはさらなる転機を迎えます。第二十七駆逐隊司令を経て、1943年5月には海軍大佐に昇進。水雷学校教官や川棚警備隊司令などを歴任したのち、1944年12月、運命の任命を受けます。それは、第二水雷戦隊旗艦である軽巡洋艦「矢矧」の艦長でした。

1945年4月6日、原は「天一号作戦」に参加。戦艦「大和」や第二水雷戦隊所属の駆逐艦8隻とともに、沖縄を目指して出撃しました。翌7日、坊ノ岬沖で待ち受けていたのは、アメリカ海軍第58任務部隊の激しい攻撃でした。「矢矧」は空襲を受け、沈没。しかし、原は第二水雷戦隊司令官である古村啓蔵少将とともに奇跡的に生還を果たします。

その後、原は川棚突撃隊(震洋)司令、そして第31突撃隊司令を歴任し、終戦を迎えました。同年11月、予備役に編入。1947年11月28日には、公職追放の仮指定を受けました。

戦後、原は自身の経験を元に『帝國海軍の最後 - 矢矧艦長の実戦記録』を執筆しました。1955年に河出書房から出版され、後に『Japanese Destroyer Captain』として英訳版も刊行。さらに1962年には『帝國海軍の最後』を出版し、2011年には復刻新版も発売されています。これらの著作は、太平洋戦争における日本の海軍、特に水雷戦隊の戦いを伝える貴重な資料として、現在も高く評価されています。

原為一は、海軍兵学校から始まり、駆逐艦艦長、軽巡洋艦艦長、そして特攻作戦への参加など、数々の重要な任務を歴任しました。彼の経験は、太平洋戦争における日本の海軍の作戦や戦況、そして戦争の悲惨さを伝える貴重な証言として、後世に残されています。彼の著書は、歴史研究者や戦争に関心を持つ人々にとって、必読の書と言えるでしょう。2009年にはテレビ朝日で放送された「よみがえる戦争の記憶」にも登場しており、その人生と経験は、様々なメディアを通じて広く知られるようになりました。

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