原田石

原田石：日本産新鉱物の発見と命名

原田石(Haradaite)は、1982年に新鉱物として発表された、日本が産出地となる希少な鉱物です。岩手県野田玉川鉱山と鹿児島県大和鉱山の2箇所のマンガン鉱床から発見されました。この発見には、東京大学と九州大学の研究者たちの長年にわたる努力が結実しています。

発見の端緒は1962年にさかのぼります。九州大学の吉村豊文氏らの研究グループが、これらの鉱山において、特異な組成を持つ鉱物を発見しました。その後、東京大学の渡辺武男氏らも研究に加わり、両研究グループは共同で新鉱物の認定に向けた調査を続行しました。研究グループ間の優先権争いなどもあったと伝えられていますが、最終的には合同チームとして研究を進め、1963年には新鉱物としての申請が行われ、承認されたと推測されます。しかし、この新鉱物の記載論文が発表されるまでには、その後数年の歳月が必要となりました。

1965年には、伊藤順氏によって原田石の人工合成が成功。さらに1967年には、その結晶構造が解明され、ようやく新鉱物としての正式な記載論文が発表されました。この論文によって、原田石は世界中の鉱物学者の間で認知されることとなりました。

特筆すべきは、この鉱物の命名です。原田石という名称は、北海道大学で鉱物学に多大な貢献をした原田準平博士の功績を称えて名付けられました。渡辺氏と吉村氏も、原田博士と共に北海道大学に在籍していたことから、この命名には深い繋がりと敬意が感じられます。

原田石の化学組成はSrV⁴⁺Si₂O₇で、斜方晶系に属します。興味深いことに、原田石を構成する[ストロンチウム]が[バリウム]に置き換わると、別の新鉱物である鈴木石へと変化します。鈴木石もまた、1982年に新種記載された鉱物で、原田石と密接な関係にあります。

本稿では、原田石の発見から命名、そしてその化学組成や結晶構造、関連鉱物との関係性までを詳細に解説しました。日本産新鉱物として、そして著名な鉱物学者の功績を称える名を持つ原田石は、今後も鉱物学研究において重要な位置を占め続けるでしょう。その発見物語は、科学における国際協力と、地道な研究の積み重ねの大切さを私たちに教えてくれます。さらに、原田石と鈴木石の類似性と相違点は、鉱物学における置換固溶体の研究において重要な事例を提供しています。今後、新たな発見や研究成果によって、原田石に関する理解がさらに深まることが期待されます。

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