原石鼎

原石鼎（はら せきてい）：大正期を彩った俳人

原石鼎は、1886年に島根県で生まれ、1951年に没した俳人です。本名を鼎（かなえ）といい、初期には鉄鼎、後にひぐらしという別号も用いました。高浜虚子に師事し、俳誌「鹿火屋」を創刊・主宰するなど、大正期の俳壇で重要な役割を果たしました。

放浪と俳句

石鼎は、医師の家に生まれましたが、医学の道を断念し、放浪生活を送ります。この放浪、特に吉野の山中での孤独な生活が、彼の俳人としての感性を磨き上げました。初期の作品には、その経験が色濃く反映されています。

ホトトギスでの活躍

1912年頃から「ホトトギス」に投句し、高浜虚子に才能を認められます。その後、上京してホトトギス社に入社し、虚子の口述筆記などの雑用を担当しました。しかし、1917年に退社し、新聞社の嘱託として俳句の選者となります。

鹿火屋の創刊と主宰

1921年、石鼎は俳誌「鹿火屋」を創刊し、主宰となります。この雑誌は、彼の俳句の世界観を表現する場となりました。詩人の北園克衛との親交も深く、自宅の離れに住んでいた北園から影響を受けました。

晩年と評価

関東大震災以降、神経衰弱に苦しみ、虚子との対立も深めますが、後進の指導を続けました。辞世の句は「松朽ち葉かゝらぬ五百木無かりけり」。生前に刊行された句集は『自選句集 花影』（1937年）のみです。死後、「鹿火屋」は妻のコウ子、後に養子の原裕が主宰を引き継ぎました。

作品の特徴と影響

石鼎の句は、色彩感覚に優れ、みずみずしい表現が特徴です。代表句として、「頂上や殊に野菊の吹かれ居り」「淋しさに又銅鑼打つや鹿火屋守」「花影婆娑と踏むべくありぬ岨の月」などがあります。

虚子は石鼎の作風を「豪華、跌宕」と評しました。山本健吉は、石鼎の句における自由な表現を評価し、大正期の俳句界における先駆的な存在であったと論じています。また、石鼎は絵も得意とし、俳句における豊かな色彩感覚も評価されています。彼の句風は、大正期に現れた後進の俳人に大きな影響を与えました。

石鼎の俳句は、自然や情感を繊細に捉え、読者の心に深く響きます。その作品は、今もなお多くの人々に愛され続けています。

著書

俳句の考へ方（天地書房、1918年）
自選句集 花影（改造社、1937年）
石鼎句集（かびや発行所、1948年）
定本石鼎句集（求龍堂、1968年）
* 原石鼎全句集（沖積舎、1990年）

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