反ファシズム知識人監視委員会

反ファシズム知識人監視委員会

反ファシズム知識人監視委員会（Comité de vigilance des intellectuels antifascistes、CVIA）は、1934年のフランスにおいて結成された重要な反ファシズム団体です。この委員会は、さまざまな左派の知識人たちが集まり、ファシズムの台頭に対抗するために組織されました。初期のリーダーシップには、民族学者ポール・リヴェが会長、哲学者で作家のアラン、物理学者ポール・ランジュヴァンが副会長として名を連ねています。

設立の背景

1930年代初頭、世界は経済の大不況に直面し、特にフランスではナチスの台頭や政治的不安定が広がりました。この状況下で、政府への不信が高まり、急進社会党の内閣が総辞職する事態が発生します。この機に右派や極右勢力が活発化し、暴力事件が相次ぎました。1934年2月6日には、国会前での暴動が発生し、多くの死傷者を出しました。これに対抗する形で、2月12日には社会党と共産党が連携し、共和制を守るためのゼネストを行いました。

この緊迫した状況は、フランスの知識人に共闘の必要性を呼びかけるきっかけとなりました。この動きは、ジャン・ゲーノが編集長を務める文芸誌『ユーロープ』での討論を通じて具体化し、経済学者フランソワ・ヴァルテルの呼びかけによって知識人たちが集結することになりました。

反ファシズム知識人監視委員会の結成

1934年3月5日、パリで開催された集会を契機に、監視委員会が正式に結成されました。この集会には、さまざまな知識人や一部の共産党員が参加し、「汚職・腐敗と闘う」というテーマのもと、権利と自由の維持を訴えました。設立当初の仮事務局には、ヴァルテルが事務局長、リヴェが会長を務め、後に正式な名称を「反ファシズム知識人監視委員会」としました。

委員会は、広範な知識人や教員に参加を呼びかけ、数ヶ月後には会員数が数千人に達するなど、全国的な組織へと成長していきました。彼らは、労働組織や他の反ファシズム団体とも密に連携しながら、1934年7月には「人民戦線」を結成し、共にファシズムに対抗する姿勢を強めました。

活動と内部対立

反ファシズム知識人監視委員会は、定期的に集会を開催し、重要な問題についてパンフレットも発行しました。これらの文書では、ファシズムに対する具体的な議論がなされ、特に急務として自由や平和を守る必要性が強調されました。しかし、団体内部では現実的な平和主義と急進的な平和主義の対立が生じ、次第に意見の不一致が深刻化していきました。特に、1936年頃からは再軍備の必要性を巡っての対立が顕在化し、リヴェとヴァルテルは最終的に脱退することになりました。

このような内部分裂と政治状況の変化も影響し、組織は次第に力を失い、1939年には反ファシズム運動そのものが消滅するに至ります。特にソ連の影響や独ソ不可侵条約の締結がさらなる失望をもたらし、委員会の活動は終息を迎えることとなりました。

歴史的意義と遺産

反ファシズム知識人監視委員会は、政治的緊張が高まる中で知識人が示した連帯の象徴といえる存在でした。その活動は、知識人たちがファシズムに対抗するためにどのように団結し、声を上げたのかを示す歴史的な一歩となりました。その後の運動においても、この委員会の経験が生かされ、左派が一つの目的のために結集する重要性を再認識されることとなりました。

もう一度検索