反社会復帰

反社会復帰とは

反社会復帰とは、精神障害者の社会参加において、労働を必須としない考え方です。これは、従来の社会復帰支援とは異なり、働くことが難しい状況にある人々が、それぞれのペースで社会と関わることを目指します。

背景

従来の社会復帰支援は、労働を前提としたものでした。しかし、障害の程度や社会環境、後遺症などによって、労働が困難な人もいます。無理に労働を強いることは、障害の悪化や自殺につながる可能性も指摘されています。

そこで、労働を前提としない社会参加の考え方が生まれました。これは、障害を持つ人の生活の質を維持し、社会とのつながりを保つことを目的としています。

社会復帰から反社会復帰へ

1960年代、日本では精神障害者の社会復帰には労働が不可欠という考え方が強く、精神科病院では患者を管理するような「生活療法」や「作業療法」が行われていました。しかし、1970年代になると、精神科病院の開放化運動が始まり、「仲間同士で支え合い、病を持ちつつもあたりまえにその人らしく生活していくこと」が重視されるようになります。そして、1980年代には、「社会復帰（社会的適応と経済的自立）」ではなく、「社会参加（反社会復帰）」という考え方が広がっていきました。

日本の制度と反社会復帰

日本では、1960年代に社会保障制度が整備されましたが、障害者向けのサービスは十分ではありませんでした。しかし、精神障害者の当事者の意見を取り入れ、作業を強制しない共同作業所（居場所）が現れました。これは、日中の居場所の提供や人間関係の練習など、労働以外の活動を重視したものでした。このような共同作業所は、1999年に精神障害者地域生活支援センターに引き継がれています。

反社会復帰の意義

反社会復帰は、障害を持つ人の多様なニーズに対応し、それぞれのペースで社会参加を可能にするものです。これは、障害を持つ人が、人間としての尊厳を保ちながら、地域社会で生活していく上で重要な概念です。

関連する概念

働かない権利: 反社会復帰の考え方と密接に関連しており、労働を強制されない権利を意味します。
自己決定権: 障害を持つ人が、自分の生活や社会参加について、自分で決定する権利です。
障害者の権利に関する条約: 障害者の人権を保障する国際的な条約であり、反社会復帰の考え方も含まれています。

関連団体

精神障害者患者会
精神障害者家族会

制度

生活保護
障害年金

参考文献

天上天下「病」者反撃！―地を這う「精神病」者運動「病」者の本出版委員会　社会評論社　1995年
精神障害者をどう裁くか　岩波明　光文社　2009年

関連項目

社会復帰
日本国憲法第25条 - 生存権
日本国憲法第27条 - 勤労の権利 - 勤労の義務
働かない権利
自己決定権
障害者の権利に関する条約
障害者 - 身体障害 - 知的障害 - 精神障害 - 発達障害

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