収束帯 (音波)

収束帯 (Convergence Zone, CZ) とは

収束帯（CZ）は、音源から遠距離に位置する海面近くで、音波が集束する現象が発生する領域を指します。この現象は、音響探知技術、特にソナーによる遠距離探知において重要な役割を果たします。

歴史的背景

アメリカ海軍は1940年代から海洋環境における音波の伝搬研究を始めました。この研究には、音源の探知やその正確な位置を特定するための実験が含まれていました。その結果、モーリス・ユーイング博士らによって「深海サウンドチャネル（SOFARチャネル）」が発見されました。このサウンドチャネルは、海中における水温、塩分、圧力の変化によって形成され、特に深海の等温層と主水温躍層の間に存在します。

音速が最小となるこの地点では、音波が束ねられ、中程度の音響出力でも非常に長距離を伝搬することが可能となります。これは、音線がレンズのような役割を果たすため、音波は海面や海底に反射することが少なく、効率的に伝わります。

収束帯の形成

収束帯は、深海サウンドチャネルが海面近くまで上昇したときに形成されます。この時、音線は正弦波のような大きな波を描き、波の頂点が海面近くに近づくことで、音源から発信された音波を海面近くで受信することが可能になります。実際には、特定の距離（波長の整数倍に該当する距離）で、音波がこの位置に集束します。

音波の収束点を海図にプロットすると、音源を中心に同心円状に広がる帯状の海域が現れます。これが収束帯と呼ばれるものです。実測データによれば、収束帯でのピーク音圧レベルは、通常の球面拡散や吸収を考慮した場合よりも約25デシベル高いことが示されています。この増加は「収束利得」として知られ、一般的には10〜15デシベルの範囲内です。

収束帯の特性と実用性

収束帯の出現位置は海洋環境の条件によって異なりますが、例えば北大西洋では音源から約30〜70海里の距離に第1CZまたは第2CZが見られます。収束帯の幅はおおむね全体の距離の5〜10パーセント程度で、第1CZの場合、約3海里にわたって観測されます。理論的には第3CZや第4CZも存在する可能性がありますが、実際に利用するのは難しいのが現状です。

ただし、音源や受信器が深海にある場合、収束帯は2つの半帯として観測される場合があります。さらに、CZは全ての海域で観測できるわけではなく、一般的には5,000メートル程度の水深が必要です。これらの条件が整った特殊な水中環境でのみ、収束帯の現象が観測されます。

例えば、低周波探信儀であるAN/SQS-53を使用しても、実際の運用においては、音源の直接探知範囲が9 km以内に限られることがわかっています。

結論

収束帯は、海洋音響研究の重要な一環であり、音波の伝搬特性の理解において重要な現象です。これにより、海中での音響探知技術の進化が促進されています。

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