取

取（しゅ）の概要

取（しゅ）は、サンスクリット語およびパーリ語で「ウパーダーナ（upādāna）」に由来し、物事に対する執着や、その活動を維持する源としての意義を持っています。仏教において重要な概念として、四つの執着が挙げられ、それぞれが人間の苦しみや煩悩と深く結びついています。この概念は、釈迦の教えの中で、執着やアタッチメントの理解に欠かせない要素です。

執着の種類

経蔵の教えにより、釈迦は次の四つの執着を示しています。これらは総称して「四取（ししゅ）」と呼ばれます。
1. 感覚-喜びへの執着（kam-upadana）: 世俗的な喜びや欲望に対する執着。これが強くなると、過度な渇愛が生まれ、心の平和を損なう原因となります。
2. 間違った視点への執着（ditth-upadana）: 例えば、物事が永遠であるという固定観念や、逆に全てが消え去るという断定的な見解への執着。これらの誤った視点が、真実に対する理解を妨げます。
3. 儀式と象徴への執着（silabbat-upadana）: 宗教儀式や修行方法への過度の執着。具体的には、特定の行いを行うことで直ちに解脱できると信じていることに起因します。
4. 自我信条への執着（attavad-upadana）: 自我を不変の存在と捉えること。この執着によって、五蘊や無我の理解が妨げられます。

執着の相互作用

ブッダゴーサの考えでは、四取は相互に関連しており、例えば欲取が強化されると、次第に見取や戒禁取も影響を受けるとされています。これにより、根本的な自我信条の誤解が明らかになり、そこから苦しみが生じることが分かります。つまり、根本的な誤認が全ての苦の根源であるということです。

取の異なる表現

アビダルマでは、取を貪（たん）や悪見（あくけん）といった概念を用いて区別することができます。貪は欲取に関連し、他の取（見取、戒禁取、自我信条）との違いを明確に示します。

渇望と取の違い

ブッダゴーサは、取と渇望の違いを以下のように表現しています。渇望は泥棒がまだ手に入れていない物のために手を伸ばすことを象徴し、取は手に入れたものを手放さない様子を示しています。このように、渇望は探し続ける苦しみから来ており、取は得たものを維持しようとする苦に繋がっています。

苦の因果関係における取

仏教の根本的な教えでは、取（ウパーダーナ）は苦の中心的な要素とされます。一つ目の諦では苦の原因として取が挙げられ、二つ目の諦では渇愛の重要性が強調されます。さらに、十二因縁の教えにおいては、取は渇愛が生み出す結果であり、取が存在することでさらなる苦が生じることが明らかにされています。このように、取は渇愛と密接に関連し、人間の苦しみを理解するための重要な鍵となります。時には、取の研究を通じて、自己理解や煩悩の克服に繋がる道を見出すことができるでしょう。

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