受胎告知 (コレッジョ)

コレッジョの『受胎告知』

『受胎告知』（伊: Annunciazione、英: Annunciation）は、ルネサンス期の画家コレッジョが1525年頃に制作したフレスコ画です。この作品は、パルマのサン・フランチェスコ教会（Church of San Francesco）の壁面を飾るために描かれました。現在はパルマ国立美術館に所蔵されており、また、ニューヨークのメトロポリタン美術館には準備素描が残されています。

作品の背景

サン・フランチェスコ教会は、当時パルマの市街地南部に位置していました。コレッジョは、サン・ジョヴァンニ・エヴァンジェリスタ聖堂の壁面装飾を終えた後、この教会の依頼で『受胎告知』を制作しました。しかし、フレスコ画は大きく損傷しており、その色彩や構図をはっきりと見ることは難しい状況です。それでもなお、コレッジョの独創的な表現で受胎告知の場面が描かれていることがわかります。

描かれた場面

画面には、大天使ガブリエルが雲の上にひざまずき、翻る衣をまとって聖母マリアの部屋に現れる姿が描かれています。ガブリエルは、長い金髪と緑色の翼を持ち、同じく緑色の服を着ています。両腕を広げたその仕草は、マリアに神の子を身ごもったことを告げている瞬間を捉えています。ガブリエルの背後には、天国の使節団である複数の天使がおり、そのうちの一人は白い百合の花を持っています。一方、祈りを捧げていた聖母マリアは、大天使の出現に驚きつつも、首を垂れてその言葉に耳を傾けています。また、ガブリエルの受胎告知と同時に、黄金の光の中に鳩の姿で表された聖霊が現れており、聖母マリアの処女懐胎を象徴的に示しています。

来歴

コレッジョの死後、1545年にパルマ公国が建国されると、翌年には城壁外の建築物の取り壊しが命じられました。サン・フランチェスコ教会もその対象となり、取り壊しの際にフレスコ画は壁から切り離されました。ジョルジョ・ヴァザーリによると、フランチェスコ会の修道士たちは、鉄で補強された木材を使って壁を慎重に切り取り、絵画を無傷で保存したそうです。このことから、コレッジョの死後においても、彼の名声が非常に高かったことが窺えます。

その後、フランチェスコ会はカーポ・ディ・ポンテにサンティッシマ・アヌンツィアータ教会を建設し、1616年に完成すると『受胎告知』も運び込まれました。しかし、この場所は常に保全上のリスクがあったため、1875年にパルマ国立美術館に収蔵されることになりました。

準備素描

メトロポリタン美術館に所蔵されている準備素描は、ピンク色の紙にインク、薄いペイント、そして厚い白のグアッシュで描かれています。この素描は、サイズは小さいながらも、壁画の最終的なデザインを決定づける重要な役割を果たしたと考えられています。コレッジョの同様の技法で描かれた素描は、当時のイタリアにおいて最も絵画的な作品の一つと言えるでしょう。

まとめ

コレッジョの『受胎告知』は、ルネサンス期の芸術における重要な作品であり、その独創的な構図と表現力は、現在も多くの人々を魅了し続けています。このフレスコ画と準備素描は、コレッジョの芸術的才能を示す貴重な証拠として、大切に保存されています。

参考文献

ルチア・フォルナーリ・スキアンキ『コレッジョ イタリア・ルネサンスの巨匠たち28』森田義之訳、東京書籍（1995年）

外部リンク

パルマ国立美術館公式サイト, コレッジョ『受胎告知』
* メトロポリタン美術館公式サイト, コレッジョ『受胎告知』

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