古今亭志ん橋 (6代目)

六代目 古今亭 志ん橋

昭和から令和にかけて、東京の落語界で確かな存在感を示した落語家、六代目古今亭志ん橋師は、1944年8月17日、東京都墨田区江東橋に小椋幸彦として生を受けました。落語協会に所属し、高座では「大拍子」を出囃子として用いました。

高校を卒業後、一度はガソリンスタンドで社会に出ましたが、落語家への強い志を抱き、1969年1月、当代きっての名人と謳われた三代目古今亭志ん朝師の門を叩きました。前座名は「古今亭志ん太」といい、1972年10月に前座として認められます。

地道な修業を積み、1975年5月には二ツ目に昇進。この同期には、蝶花楼花蝶師、立川談生師、林家源平師、立川小談志師といった顔ぶれがいました。二ツ目としてさらに腕を磨き、1982年12月、ついに真打昇進を果たします。同時に真打となったのは、初代古今亭志ん五師、七代目三遊亭圓好師、四代目吉原朝馬師、春風亭一朝師、三代目三遊亭小金馬師、柳家せん八師、立川談生師、立川左談次師、六代目立川ぜん馬師ら、そうそうたるメンバーでした。真打昇進に際し、「六代目古今亭志ん橋」を襲名し、落語家としての大成期を迎えます。

志ん橋師の外見的な特徴として、多くのファンに親しまれたのが、そのスキンヘッドでした。この個性的な風貌は、高座のみならず、テレビや映画への出演時にも強い印象を残しました。

師はまた、後進の指導にも熱心でした。ご自身の直弟子としては、現在真打として活躍する三代目古今亭志ん丸師、古今亭志ん雀師、そして七代目古今亭志ん橋師を育てました。特筆すべきは、志ん朝師や兄弟子であった初代志ん五師、古今亭志ん駒師が病に倒れたり鬼籍に入られたりした際に、師を失った多くの弟子たちを自らの門下に迎え入れ、師弟関係を超えた面倒見の良さを示したことです。

古今亭志ん陽師は、志ん朝師、初代志ん五師と立て続けに師を失うという不遇に見舞われましたが、志ん橋師のもとで芸を磨き続けました。
五代目古今亭志ん好師、二代目古今亭志ん五師、古今亭駒治師らも、初代志ん五師や志ん駒師の死去に伴い、志ん橋門下に移籍しています。

このように、志ん橋師は落語界全体の未来を見据え、多くの弟子たちの育成に尽力しました。

また、他の落語家との親睦も深く、特に五街道雲助師、柳家喜多八師とは、三人会を長年にわたり開催しました。当初は三人の名前をもじった「九識の会（くもすけ・しんきょう・きたはち）」という名称でしたが、後に「のれん噺」と名を改め、独特の雰囲気を持つ会として人気を集めました。

落語の高座以外にも、俳優として活躍する機会もありました。テレビドラマでは「江戸の牙」や「うぬぼれ刑事」、映画では「の・ようなもの のようなもの」に出演し、その存在感を放ちました。

その実力は、様々な賞によっても称えられました。

1979年、若手の登竜門とされる国立劇場新人演芸会で銀賞を受賞。
1985年には浅草芸能大賞の新人賞を獲得。
* 1986年には「若手花形落語会」として文化庁芸術祭優秀賞を受賞しました。

晩年まで精力的に高座に上がっていましたが、2023年1月5日、浅草演芸ホールでの初席出演が、結果的に生前最後の定席での高座となりました。そして、2023年10月8日午前5時43分、大腸がんにより、東京都内のご自宅で静かに息を引き取られました。享年79歳でした。師の訃報は、奇しくも最後の直弟子であった古今亭志ん松師（後に三代目志ん丸門下へ移籍）の、翌年9月からの真打昇進が決定した直後の出来事であり、その悲しみは一層深いものとなりました。

しかし、志ん橋師の落語家としての魂は、弟子たちによって確かに受け継がれています。特に古今亭志ん松師は、真打昇進と同時に師の名跡である「志ん橋」を継ぐことを公にし、2024年9月下席より七代目古今亭志ん橋として歩み始めました。

六代目古今亭志ん橋師は、個性的な容姿と磨き上げられた話芸で多くの聴衆を魅了し、また、多くの弟子たちの指導に心を砕き、落語界の発展に大きな足跡を残しました。その功績と人柄は、今後も語り継がれていくことでしょう。

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