立川ぜん馬

六代目立川ぜん馬。その名は、落語界において確固たる地位を築いた名跡である。立川流の真打として活躍し、古典落語の粋を現代に伝えた彼の生涯は、数々の逸話と魅力に満ち溢れている。

立川ぜん馬の名跡は、初代から五代目まで、系譜に不明瞭な点が多い。初代は桃寿庵清翁坊、二代目には「今川奴の善馬」の異名を持つ人物が名を連ねるなど、各代で個性豊かな落語家たちがこの名跡を継いできた。四代目森口啓三郎は寄席小屋経営中に火災で亡くなるなど、波乱に満ちた歴史もまた、この名跡を彩る要素の一つとなっている。

そして六代目、立川ぜん馬（1948年9月22日-2024年12月8日）。東京都世田谷区出身の彼は、1971年、七代目立川談志に入門する。前座名「立川孔志」を経て、二ツ目時代は「朝寝坊のらく」を名乗った。1981年にはNHK新人落語コンクールで最優秀賞を受賞、その才能を早くから開花させた。

1982年12月、真打昇進とともに六代目立川ぜん馬を襲名。師匠である談志と共に落語協会を脱退し、落語立川流のAコース真打となった。

彼の芸の幅は実に広く、滑稽噺から人情噺、怪談、芝居噺まで、あらゆる演目を高いレベルでこなす。古典落語の精通ぶりは群を抜いており、「お客に江戸落語全般を堪能させられる」数少ない落語家の一人として称賛された。師匠譲りの芸の深さと、独自の洗練された語り口は、多くの観客を魅了した。

同期には、六代目三遊亭円楽、春風亭小朝、桂歌春らがおり、円楽とは前座、二ツ目時代から深い交流があった。前座時代には、円楽、小朝、古今亭八朝と共に「四天王弟子の会」を結成するなど、同世代の落語家たちとの繋がりも彼の生涯を彩る要素となっている。

落語家としての活動以外でも、彼は多様な才能を発揮した。妻であるさこみちよと共に、関東近辺でイベントを開催。2006年には夫婦で群馬県片品村の親善大使に就任するなど、地域貢献にも積極的に取り組んだ。妻がかつて出演していたラジオ番組『大沢悠里のゆうゆうワイド』の司会者、毒蝮三太夫とは、師匠を通じて親交があり、「立川毒まむ志」という高座名を持つ落語家でもある。

また、居合道では夢想神伝流二段の腕前を持つなど、武道の鍛錬にも励んだ。学生時代には競輪場の予想屋でアルバイトをしていた経験から、競輪の予想には造詣が深いという一面も持つ。高座では、落語以外にも獅子舞を披露するなど、芸の幅の広さを示している。

2014年にはがんの手術を受け、その後は高座への出演を控える傾向にあった。2016年には入退院を繰り返していたことも明かされている。

六代目立川ぜん馬。その名は、古典落語の粋を伝え、多くの観客を魅了した名落語家の証である。彼の芸は、これからも多くの人々の心に語り継がれていくことだろう。彼の残した名演の数々は、CD『立川ぜん馬名演集 第一集』などに収録されている。彼の功績は、落語史に燦然と輝く一ページとして刻まれた。

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