古官話

古官話（Old Mandarin）とは

古官話、または早期官話とは、中国の宋代後期から元、明、清の時代にかけて用いられた中国語の一種であり、官話の初期段階を指します。この時期の言語は、現代の中国語とは異なる特徴を持ち、特に北方方言を中心に独自の発展を遂げました。

特徴

漢音の使用: 元代においては、唐宋時代から伝わる漢音が引き続き使用されていたと考えられています。これは、古い時代の発音体系が一部残存していたことを示唆しています。

文語と口語の乖離: 語彙や文法の面で、文語と口語の差が顕著になりました。これにより、日常会話で使用される言葉と、書かれた文章で使用される言葉が大きく異なるようになりました。

白話小説の普及: 明代から清代にかけては、口語を用いた白話小説が広く書かれるようになり、文学作品にも口語表現が浸透していきました。

動詞の後置: 北方方言においては、アルタイ諸語の影響により、動詞が文末に後置される現象が見られるようになりました。これは、語順が変化したことを示す重要な特徴です。

アルタイ諸語からの語彙の吸収: 元代と清代には、北方語を中心に、アルタイ諸語からいくつかの語彙が取り入れられました。ただし、介詞の「把」は唐代にはすでに存在していたことが確認されています（例：白居易の『戯酔客』には「莫把杭州刺史欺」）。

文末助詞「有」の多用: 元代の口語では、文末助詞の「有」が頻繁に用いられるようになりました。これは、文末表現における変化を示すものです。

「正音」から「官話」へ: 都があった北京の言葉を中心とした言語が全国に広まり始めました。当初は「正音」と呼ばれていましたが、官吏が主に使用したことから明代以降、「官話」という名称が定着しました。この官話が、後の中国語の標準語へと繋がっていきます。

入声の消滅: 多くの北方方言で、入声が消滅しました。入声とは、語尾が破裂音で終わる音節であり、これが消失したことは、発音体系に大きな変化が起きたことを示しています。

児化音の出現: 明代には、北方方言を中心に「児化音」が現れました。これはアルタイ諸語の影響ではなく、北方方言自体の音韻変化によるものです。語尾に「儿」の音が付加されることで、語の意味やニュアンスが変化します。

軟口蓋音の口蓋化: 清代の乾隆期には、軟口蓋音の口蓋化が進行しました。これにより、一部の発音が変化し、音韻体系がさらに複雑化しました。

音韻

古官話の音韻体系は、現代中国語とは異なる特徴を持っています。特に、入声の消失や児化音の出現は、この時代の言語変化を象徴するものです。また、軟口蓋音の口蓋化も重要な変化の一つです。

関連項目

* 南京官話

まとめ

古官話は、中国語の歴史において重要な段階であり、その変化は現代中国語の形成に大きな影響を与えました。文語と口語の乖離、北方方言における変化、そしてアルタイ諸語との接触など、多くの要因が複雑に絡み合い、独特の言語体系が形作られました。この時代の言語を理解することは、中国語の歴史的な発展を深く理解する上で不可欠です。

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