官話

官話（かんわ）について

官話は、中国語の方言の一つであり、広義には公用語を指す言葉として用いられています。この用語は、長い間中国の政治、経済、文化の中心が存在した地域で使用されてきたことに由来し、そのため歴史的にも重要な役割を果たしてきました。官話は、近代以降標準中国語である国語、普通話、華語の基礎ともなっています。

官話の使用地域

官話方言は、中国の北方地域に多く存在し、具体的には北京語、天津語、東北語、西安語、成都語、南京語、揚州語などが挙げられます。これらの方言は、中国の東北、華北、西南、江淮一帯に分布しており、全体として漢民族の約73%が使用しています。しかし、山西省に存在する晋方言（晋語）は、この語群とは区別されるべきだとの意見もあります。また、江淮方言（下江官話）についても、他の官話方言とは異なり、呉方言に分類されることがあるなど、議論が続いています。

官話は、特に以下の4つの下位方言に分けられます：
1. 華北東北方言（北京官話、東北官話など）: 北京、天津、黒竜江省、吉林省、遼寧省などで使用。
2. 西北方言（中原官話、蘭銀官話など）: 陝西省、甘粛省、青海省など西北地域。
3. 西南方言（西南官話）: 重慶、四川省、雲南省、貴州省など。
4. 江淮方言（江淮官話）: 安徽省、江蘇省の一部。

歴史的背景

中国の歴代王朝では、共通語が設けられていました。周代に使用されていた「雅言」や漢代の「通語」など、時代を経ても共通語の重要性は変わらず続いていました。官話という名称は、17世紀に華南に渡来した宣教師が、官署で使用されていた言語を指して名付けたことに由来しています。それ以来、南京音を基盤とした南京官話が規範とされ、清代に入ると、北京が首都になったことでその中心が北京音へと変わっていきました。

清代には、官話を学ぶための「正音書院」が設立され、新たな教科書も作成されるなど、官話教育の体系化が進みました。その後、辛亥革命を経て中華民国が成立すると、官話は国語として改名され、北方方言に基づいた現代標準中国語の確立へとつながりました。

満洲語と官話

清朝時代、北京官話には満洲語からの影響が見受けられ、特に宮廷で使われた語彙が多く含まれています。「帥」などの言葉は、現在でも一般的に使われていますが、普通話ではこれらの満洲語由来の語彙はあまり使われていません。

音韻の特徴

官話は地域により音韻の違いが存在します。南北の差異として、南方言では歯擦音とそり舌音の区別が少ないのに対し、北方官話では明確に区別されています。また、韻母においても、南方官話では鼻韻母が合流しているなど特徴が見受けられます。

まとめ

官話は中国語において非常に重要な位置を占める方言であり、歴史的、政治的につながりの深い言語です。その使われ方や進化は、単に方言という枠を超え、現代社会においても影響を与えています。官話を理解することは、中国の政治や文化を理解する手段ともなるでしょう。

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