古山一郎

古山 一郎

古山 一郎（ふるやま いちろう）は、大正から昭和にかけて日本の陸上競技界で活躍した著名な投擲（とうてき）選手です。1907年（明治40年）2月8日に大阪市北区に生を受け、1993年（平成3年）10月9日にその生涯を閉じました。円盤投げとハンマー投げを得意とし、学生時代を中心に輝かしい成績を残しました。

古山家は旧出雲広瀬藩士の家系に連なる名家でした。一郎は四條畷中学（現在の大阪府立四條畷高等学校）で学び、卒業後に早稲田大学専門部へと進学します。早稲田大学専門部は、専門学校令に基づき設置された、今日の大学学部とは異なる短期高等教育機関であり、古山は法律科に在籍していました。この早稲田大学専門部での学生生活が、彼の競技者としての才能を開花させる舞台となります。

早稲田大学在学中の古山は、円盤投げの選手として頭角を現します。1927年（昭和2年）と翌1928年（昭和3年）には、日本のトップ選手が集う日本陸上競技選手権大会において、円盤投げで二連覇を達成するという快挙を成し遂げました。この国内での圧倒的な強さを示す一方で、国際舞台への挑戦も始まります。1928年6月、早稲田大学競走部はイギリスへの遠征を実施し、古山もその一員として参加しました。同年7月10日、歴史あるオックスフォード大学とケンブリッジ大学の合同チームである「アキレス・クラブ」との競技会が開催され、古山は円盤投げで見事に優勝を飾ります。このイギリス遠征での成功が、彼をさらなる大舞台へと導きました。

イギリス遠征から帰国後、古山は同年の1928年アムステルダムオリンピックに日本代表として選出され、男子円盤投げ競技に出場しました。オリンピックという世界の檜舞台で日本の投擲界を代表する選手として名を刻んだのです。

早稲田大学専門部を1929年（昭和4年）に卒業した後、古山は翌1930年（昭和5年）に明治大学の学部に入学します。この進路変更により、彼の競技人生は新たな展開を見せました。明治大学体育会競走部も古山を重要な選手として部史に位置づけており、早稲田、明治という二つの名門大学で競技活動を行った稀有な経歴を持つ選手と言えます。

明治大学では、円盤投げに加えてハンマー投げでも才能を発揮します。1931年（昭和6年）の日本学生陸上競技対校選手権大会（日本インカレ）では、ハンマー投げで優勝する記録を残しました。当時の明治大学競走部には、古山に加え、後に1932年ロサンゼルスオリンピックにハンマー投げで出場する長尾雄治選手や落合正義選手が所属しており、彼ら三人は「明大のハンマートリオ」として日本の陸上競技界にその名を轟かせたと言われています。古山は1932年（昭和7年）には明治大学体育会競技部の副将を務めるなど、チームのリーダーとしても貢献しました。

1933年（昭和8年）に明治大学を卒業した古山一郎は、競技生活に区切りをつけ、卒業後は日本の著名な百貨店である三越百貨店に勤務しました。競技者としての輝かしいキャリアを終えた後も、社会人として活躍の場を移しました。

古山一郎は、戦前の日本の陸上競技、特に投擲種目の発展に寄与した重要な選手の一人です。早稲田大学、明治大学という異なる環境で国内外での実績を積み上げ、日本のオリンピック史にもその名を刻みました。円盤投げ、ハンマー投げの両種目で高いレベルのパフォーマンスを示し、「明大のハンマートリオ」の一員としても記憶されるなど、その競技人生は多岐にわたる功績に彩られています。彼の活躍は、当時の日本の学生スポーツと国際競技への挑戦の歴史を物語る貴重な一例と言えるでしょう。

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