古本と少女

古本と少女

『古本と少女』は、日本の漫画家つげ義春により1960年に発表された短編漫画で、全20頁から構成されています。最初に発表されたのは、若木書房の『Meiro2』誌であり、本作は作家のミステリー作品の中でも、ひときわ情緒的な内容となっています。この作品は、貧しい学生が古本屋で経験する心理的葛藤を描写し、単なる事件解決ではない深いテーマが盛り込まれています。

概要

本作は、1960年1月に刊行された『Meiro1』に掲載された作品『殺し屋』に続くもので、当時のつげ義春が取り組んでいた多くのミステリー作品とは異なり、心情に重きを置いた物語となっているのが特徴です。作品の本質とも言えるのは、「古本の間から落ちた1000円札」を巡る一連の出来事です。このような事件の解決が単調で無味乾燥を感じさせ、描写に不満を抱くようになったつげは、やがて新たな表現方法を探求していきます。この作品の後、彼は三洋社から創刊された『忍風』において「武蔵秘話シリーズ」を描くことになり、そのスタイルの変化が見受けられます。

登場人物

• - 古本屋の少女: 学生の目に留まる存在。
• - 学生: 貧しい生活を送る主人公。
• - 古本屋のおやじさん: 古本屋の店主。
• - 本を売った青年: ジェネレーションギャップを象徴するキャラクター。

あらすじ

物語は、貧しい学生の日常から始まります。彼は毎日のように古本屋に通い、1000円の初版本に心を奪われていますが、経済的な理由からそれを購入することはできません。そんなある日、彼がいつものように立ち読みをしていると、何と本の隙間から1000円札が落ちてきました。驚きつつも、思わずその札を拾った学生は、すぐに自宅へと急ぎます。

しかし、拾ったお金は本の持ち主に返すべきだという良心が彼を古本屋へと向かわせます。そこにちょうど本の本来の持ち主が現れ、1000円を使って本を買い戻そうとします。学生は自分が先に拾ったお金であることを主張しますが、青年は1500円を提示し、無事に本を取り戻せてしまいます。どうにも腑に落ちない学生は、1000円の行方を思案に暮れます。

「本来の持ち主に返すべきか、それともこのまま手にしておくべきか」という葛藤に悩む彼は、再度青年の自宅を訪ねますが、青年は「本の間にお金を入れた覚えはない」と告げ、逆に学生の所在を探していたと明かします。思いもよらぬ展開に戸惑う学生に対し、青年はにこやかに「帰ればわかりますよ」と微笑みます。

収録本

この作品は以下の書籍にも収録されています：

• - 『Meiro2』（若木書房）1960年2月
• - 『ガロ』（青林堂）1966年9月号
• - 『紅い花』（小学館文庫）1995年1月
• - 『限定版 つげ義春選集8』（北冬書房）1979年7月
• - 『ゲンセンカン主人』（双葉社）1984年4月28日

このように『古本と少女』はつげ義春の独特な感性が感じられる作品であり、登場人物の心情や物語の展開には深い意味が込められています。特に、善悪の捉え方や人間関係の複雑さを描いた作品として、今も多くの読者に愛されています。

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