古画品録

『古画品録』は、中国南北朝時代の南朝斉・梁の画家、謝赫（しゃかく）によって著された、中国最古の画品書です。中国絵画史上、最も重要な画論文献の一つとして位置づけられています。

概要

この画論の序文に記された「画の六法」は、顧愷之（こがいし）の絵画理論を発展させたものであり、絵画の優劣を決定するための基準を示し、後世の画論に多大な影響を与えました。

画の六法

画の六法は、以下の六つに分類されます。

1. 気韻生動（きいんせいどう）: 生き生きとした精神や生命感が表現されていること。最も重要な要素とされます。神韻、神気、生気、荘気などとも言い換えられ、見る人を感動させる調和の取れたリズムを持つことを指します。
2. 骨法用筆（こっぽうようひつ）: 筆遣いの技法。筆の運びや線の表現によって、対象の骨格や構造を捉え、力強さや立体感を表現します。
3. 応物象形（おうぶつしょうけい）: 対象の形態を正確に捉え、写実的に表現すること。客観的な観察眼と描写力が求められます。
4. 随類賦彩（ずいるいふさい）: 対象の種類に応じて適切な色彩を用いること。自然な色彩感覚と色彩表現の技術が必要です。
5. 経営位置（けいえいいち）: 画面全体の構成や配置のバランス。要素の配置、空間の使い方、視線の誘導などが含まれます。
6. 伝移模写（でんいもしゃ）: 古典絵画の模写を通して、伝統的な技法や様式を習得すること。模写は単なるコピーではなく、先人の精神を理解し、自己の表現に繋げるための手段とされます。

唐の時代の張彦遠（ちょうげんえん）の『歴代名画記』や朱景玄（しゅけいげん）の『唐朝名画録』などは、この六法を根拠として画論を展開しています。北宋時代の郭若虚（かくじゃくきょ）は、「六法の精論は万古移らず」とまで述べています。21世紀の中国においても、この六法に関する議論は続いています。

謝赫は、この六法に基づいて、当時の著名な27人の画家を第一品から第六品までに分類し、論評しました。第一品には、陸探微（りくたんび）、曹不興（そうふきょう）、衛協（えいきょう）、張墨（ちょうぼく）、荀勗（じゅんきょく）の5人が挙げられ、顧愷之は第三品とされました。

参考文献
宇佐美文理訳注「古画品録」
嶋田英誠 『WEB版中国絵画史辞典』
王伯敏 『中国絵画史事典』 遠藤光一訳、雄山閣出版、1996年、ISBN 9784639013853

関連項目
六法 (画論)
中国の絵画
中国の書道史

もう一度検索