謝赫

謝赫（しゃかく）は、中国の南北朝時代、南朝の斉から梁にかけて活躍した画家であり、評論家としても知られています。彼の生涯については詳しい記録が残っておらず、生没年も正確には分かっていませんが、おおよそ5世紀後半から6世紀前半に生きていたと推定されています。

謝赫が中国美術史において重要な人物とされるのは、彼が著した『古画品録』という画論書が存在するからです。この書は、中国史上初の完成された画論書とされており、顧愷之の画論を発展させた「画の六法」を提唱したことで知られています。「画の六法」とは、絵画の評価基準となる六つの要素を示したものであり、具体的には以下の内容を含みます。

1. 気韻生動（きいんせいどう）
2. 骨法用筆（こっぽうようひつ）
3. 応物象形（おうぶつしょうけい）
4. 随類賦彩（ずいるいふさい）
5. 経営位置（けいえいいち）
6. 伝模移写（でんもいしゃ）

これらの要素は、絵画の精神性、筆の運び、対象の描写、色彩の用い方、構図、そして模写の重要性を示唆しており、以降の中国絵画の理論と実践に大きな影響を与えました。画家や評論家たちは、この画論を遵守し、発展させていったのです。

姚最の著書『続画品録』には、謝赫の画業に関する記述が残されています。それによると、謝赫は風俗画や肖像画を得意とし、描くべき人物をその場で描くのではなく、特徴を記憶し、帰宅後に筆を執ったとされています。それでも、細部まで正確に描き出し、特に婦人の服装や化粧といった流行には敏感であったと伝えられています。

謝赫は「安期先生図」や「晋明帝歩輦図」といった作品を描いたとされていますが、残念ながら現存する作品は一つもありません。また、彼は独自の画風を創造したとも言われています。彼の作品が現存しないことは、中国美術史における大きな損失と言えるでしょう。

謝赫の生涯や作品に関する情報は限られていますが、彼が提唱した「画の六法」は、中国絵画の歴史において非常に重要な概念であり、後世の芸術家たちに多大な影響を与え続けています。彼の名は、中国美術史において不朽のものとして語り継がれるでしょう。

関連項目

古画品録

出典

王伯敏 『中国絵画史事典』遠藤光一訳 雄山閣出版、1996年、ISBN 9784639013853
* 嶋田英誠　WEB版 中国絵画史辞典 (SHIMADA's Dictionary for Chinese Painting)

もう一度検索