古野伊之助

古野 伊之助の生涯と業績

背景と初期の経歴

古野伊之助（1891年11月13日生まれ）は、三重県富田村（現・四日市市）にて織物業を営む古野宗七の長男として生まれました。彼の幼少期は厳しいもので、5歳の頃に父を事故で失った後、家族は困窮に直面します。高等小学校を卒業後、15歳で上京し、さまざまな職に就きながら英語を学びました。1909年には、AP通信東京支局で給仕としてのキャリアを開始します。

通信業界への軌跡

1912年に正式に支局の社員として働くようになり、1914年には国際通信社にて活動を開始しました。彼の業務は国際的なニュースの流通に関わるもので、特にロイター通信との関係において、日本の通信社が直面していた問題を認識しました。1920年からは北京にて国際通信社の支局長として勤務し、重要な国際事件に関与します。

同盟通信社の設立

1931年、満州事変を受け、古野は関東軍によるメディアの活用を提案し、1936年に日本電報通信社と合併して同盟通信社を設立しました。この際、彼のリーダーシップが光り、その後の通信社の発展に寄与することとなります。古野は同盟通信社の常務理事となり、情報局の委員にも名を連ねました。他社との競争が激化する中でも、彼の影響力は増していきました。

戦時下の活動

同盟通信社の社長に就任するや否や、古野は国のプロパガンダに寄与する一方で、取材現場でも指揮を執ります。盧溝橋事件や近衛内閣への協力など、その活動は多岐にわたりました。1941年には、日本新聞連盟の設立に関与し、メディア統制を政府に提案したことで、彼の影響力は絶大でした。しかし、戦時体制の中での活動は彼自身に重い十字架となり、1945年に連合国によって逮捕されることとなります。

戦後の生活と影響

戦後、古野は公職追放の措置を受けるものの、隠遁生活を送りながらも育成のための奨学金を設立するなど、社会貢献活動を続けました。また、多くの公共の機関や団体の役員や理事としての役割も担い、通信業界の進展に寄与しました。1963年には日本新聞文化賞を受賞し、1965年には勲二等旭日重光章を授与されるなど、その功績が評価されました。

最後の日々と評価

1966年4月24日、心筋梗塞により逝去。彼の葬儀は築地本願寺にて行われ、その生涯を通じて築いた通信界の影響力は今もなお評価されています。古野伊之助についての研究は1990年代以降に多く行われ、特にそのメディア統合の施策に関する文献が数多く発表されています。彼の生涯は、通信業界における彼の大胆なビジョンと厳しい戦時体制においても揺るがなかった信念を物語るものです。

もう一度検索