句集

句集：短い歌の集大成とその歴史

句集とは、連句、俳句、発句といった短い歌の文学作品をまとめた書籍のことです。単一作者によるものや複数の作者の作品を集めたものなど、様々な形態が存在します。さらに、作者自身によって選ばれた作品によるものか、他者によって選ばれたものかによっても分類されます。

その歴史は古く、連歌においては、小槻量実の付句集である『菟玖波集』（1356年）の選定資料が、現存する最古の例として知られています。俳諧においては、定環の『犬俤』（1636年）が初期の例として挙げられます。近世中期以降、俳諧の発句集は、故人の作品集や同門・知人による選集、名家の類題句集など、多様な形態で出版されるようになりました。しかし、現代のように、生前に複数の句集を出版する作家は稀でした。

近代俳句における句集の端緒は、松瀬青々の『妻木冬之部』（1901年）とされています。この句集は、季語別に編纂され、各例句に季語が明示されているのが特徴です。その後、『ホトトギス』系の俳人たちによって、同様の体裁の句集が多数出版されました。大正時代には、自由律俳句の中塚一碧楼が『一碧楼第二句集』（1920年）において、章立てを設けずに句を自由に配列する試みを行いました。

長谷川零余子の『雑草』（1924年）は、季語別の編集に年代別の章立てを設けた形式を採用しました。そして、阿波野青畝の『万両』（1931年）あたりから、純粋に制作年代順に配列する形式が主流となり、現代に至るまで最も一般的な句集のスタイルとなっています。ただし、飯田蛇笏の『山廬集』（1932年）のように、逆年代順に構成された句集も存在します。

山口誓子の『黄旗』（1935年）は、初めての書き下ろし句集であると同時に、テーマ別編集の先駆けとなりました。この作品以降、連作俳句の流行と相まって、多くの新興俳人がテーマ別の章立てを採用するようになりました。また、この頃から俳人が数年単位で句集を出版するようになるという変化も起こりました。戦後には、高柳重信の『蕗子』（1950年）以降、一句集で一つの大きなテーマを設定する手法が、主に前衛派の俳人によって試みられるようになりました。

このように、句集は、時代や俳句の潮流を反映しながら、その表現方法や構成、出版形態を変化させてきました。単なる作品集としてだけでなく、作者の思想や個性を反映する重要な文学作品として、現代においても重要な役割を担っています。様々な形式や構成を持つ句集を紐解くことで、俳句の歴史や俳人の創造性を深く理解することができるでしょう。

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