可部恒雄

可部 恒雄

可部恒雄（かべ つねお、1927年3月9日 - 2011年2月3日）は、日本の裁判官及び弁護士であり、最高裁判所判事として日本の司法制度に多大な影響を与えた人物です。彼の生涯は、法律の専門家としてだけでなく、被爆者としての経験も色濃く反映されており、その人生を通じて公平な司法の実現に努めました。

来歴

広島県に生まれた可部は、父・可部寅蔵が経営していた呉服店で育ちました。その後、旧制広島高師附属中学、旧制広島高校を経て、東京大学法学部を卒業します。彼は1952年に判事補に任官し、以降はさまざまな地裁や高裁での職務を経て、1988年には福岡高等裁判所の長官に就任しました。

1990年からは最高裁判所判事として活動し、特に司法の重大さを認識していた可部は、「重い職責を担うことになった」としっかりとした態度で職務に臨みました。彼の職務においては、1997年の愛媛県靖国神社玉串料訴訟において国側の主張を支持する意見書を提出し、反対意見を出したことが記憶に残ります。このような立場から彼は日本の法理論に影響を与え、司法の運営に寄与しました。

司法への影響

可部の裁判官としての活動は、特に薬害関連の裁判において重要な示唆を持つものでした。彼が東京スモン訴訟を担当した際に出した「可部所見」は、それ以降の多数の薬害訴訟において重要な役割を果たしました。この業績は、日本の裁判における公正さの向上に寄与し、被害者の権利を守るための道筋を整えました。

退官後の活動

1997年に定年退官した後、可部は弁護士に転身し、法律の知識を生かして社会に貢献しました。1999年には勲一等瑞宝章を受章し、社会での功績が認められました。また、2000年には歌会始の召人として、文人としての側面も発揮しました。

私生活

可部は広島で被爆した経験を持ち、妹を失うという悲劇も抱えていました。このような背景が彼の人生観に影響を与え、正義を求める姿勢につながっていたことでしょう。彼は83歳でこの世を去るまで、正義と公正をもって活動し続けました。彼の生涯は、多くの人にとっての勇気の象徴であり、その足跡は今もなお、多くの人に影響を与え続けています。

家族・親族

父・可部寅蔵は広島市で呉服商を営んでいました。可部の親族には元国税庁長官の可部哲生があり、その妻は内閣総理大臣の岸田文雄の妹です。

著書

可部は『旅情 画歌文集』を著し、法廷での経験や生活を元にした作品を残しました。

彼の影響は、法曹界のみならず、広く社会全体にわたり、今なお多くの人々にとって敬愛される存在として記憶されています。

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