台湾の教育史

台湾の教育史

台湾における教育の発展は、17世紀初頭のオランダ統治時代から現代まで、様々な支配勢力の影響を受けながら変遷を遂げてきました。本稿では、台湾原住民の教育を除き、オランダ統治時代以降の教育史を概観します。

オランダ統治時代 (1624-1662)

オランダは台湾統治下で、宣教師による布教活動の一環として教育に着手しました。1627年、宣教師の派遣により新港社に教区が設立され、本格的な布教活動が始まりました。1636年には新港に学校が設立され、宗教教育に加え、ローマ字を用いた識字教育も行われました。宣教師たちは現地語での布教を重視し、新港語による宗教教育や、新港語による聖書の翻訳、辞書の編纂などを行いました。当時の学校には80名ほどの生徒がおり、高度な文章作成能力を身につける生徒もいたと記録されています。宣教師が残した資料は、現在の言語研究においても貴重な史料となっています。

鄭成功政権時代 (1662-1683)

鄭成功政権下では、台湾における教育制度が本格的に整備されました。鄭経と陳永華は、承天府に台湾最初の孔子廟を建設し、その中に太学を設置しました。これは台湾唯一の官費による教育機関であり、儒学教育の中心地となりました。鄭成功政権は、台湾開発の基礎を築き、台湾人の精神的支柱としての地位を確立しました。

清朝統治時代 (1683-1895)

清朝統治下では、無償教育を原則とする義学方式の書院が多数設立されました。西定坊書院はその代表的なものです。これらの書院は官費または官民共同で運営され、大陸とは異なる特徴を持っていました。台湾府儒学教授や訓導は高い地位を占め、教育行政の中枢を担っていました。儒学、義学、書院以外にも、小規模な私塾が存在し、主に閩南語を用いた教育が行われていました。

日本統治時代 (1895-1945)

日清戦争の結果、台湾は日本の統治下に入りました。初代台湾総督府学務部長伊沢修二は、近代的な教育制度の導入を目指し、義務教育制度の導入や公学校の設置を推進しました。台北市に最初の西洋式小学校が設立され、その後も小学校や中等教育機関が整備されました。教員養成のため、師範学校も設立されました。高等教育機関としては、台北帝国大学が設立されましたが、台湾人の入学は制限されていました。そのため、多くの台湾人が日本本土の大学に留学しました。また、原住民向けの教育機関も設立されましたが、民族差別との批判もあります。

中華民国統治時代 (1945-現在)

第二次世界大戦後、台湾は中華民国の統治下に入りました。日本統治時代の教育制度と中国大陸の教育制度が混在する中、1968年には義務教育9年制が施行され、現在の教育体系が確立しました。高等教育機関として大学や科学技術学院などが整備されました。

まとめ

台湾の教育史は、植民地支配や戦争、社会変動といった歴史的背景と深く結びついています。各時代の教育政策は、支配者のイデオロギーや社会状況を反映しており、教育制度の変化を通して台湾社会の変容を理解することができます。また、教育の普及や質の向上に向けた努力と課題が、現在もなお続いていることを示しています。

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