台湾南部地震 (2016年)

2016年 台湾南部地震の概要

2016年2月6日午前3時57分（台湾時間）、台湾南部をマグニチュード6.6の地震が襲いました。震源は高雄市美濃区で、震源の深さは約14.6kmと比較的浅く、その影響は広範囲に及びました。この地震は、震央に近い地名から「高雄美濃地震」、被害が大きかった地域から「台南地震」、発生日時から「206大地震」とも呼ばれています。

地震の規模と各地の震度

台湾の中央気象局は、この地震の規模をリヒターマグニチュード6.6、モーメントマグニチュード6.5と発表しました。アメリカ地質調査所（USGS）は、モーメントマグニチュード6.4としています。地震の揺れは、台南市新化区で最大震度7を観測したほか、雲林県草嶺で震度6、嘉義市中心部でも震度5を記録しました。さらに、金門県や澎湖県、中国大陸東南部の福建省や広東省の一部でも揺れが観測されました。アメリカ地質調査所は、台南市新化区でメルカリ震度階級（MMI）VIII、高雄市美濃区と嘉義市中心部でMMI VIIの揺れを報告しています。香港天文台にも、市民から揺れを感じたとの報告が多数寄せられました。

地震のメカニズム

台湾は、フィリピン海プレートとユーラシアプレートが衝突する場所に位置しており、世界でも有数の地震多発地帯です。このプレートの衝突によって、震源周辺には多くの活断層が存在し、複雑な断層運動が地震を引き起こしています。また、台南市で被害が集中した背景には、嘉南平原の軟弱な沖積層による「焦点効果」が指摘されています。この効果により、台南市では強震動の継続時間や卓越周期が長くなったと考えられています。専門家は、台湾の複雑な地下構造が地震発生のリスクを高めており、余震にも注意が必要だと指摘しています。

余震の状況

本震発生後、2月8日までに17回の有感余震が観測されました。最大の余震は本震の3分後に発生したマグニチュード4.9のもので、最大震度3を記録しました。

被害状況

地震による被害は、建物の倒壊、インフラの寸断など多岐にわたりました。

建造物: 台南市では9棟の建物が全壊し、5棟が傾くなど、多数の建物が被害を受けました。特に、永康区の16階建て高層ビル「維冠金龍大樓」が横倒しに倒壊し、115名が犠牲となりました。雲林県虎尾鎮では、落下物により2名が負傷しました。高雄市の古跡である旗山天后宮でも、装飾が落下する被害がありました。
交通: 台湾高速鉄道は、台中駅以南の運行を一時的に全面停止しましたが、翌日の夜には運転を再開しました。
電力と水道: 台南市と高雄市で約16.8万戸が停電、台南市では約40万戸が断水しました。嘉義市では、民家一戸が天井から倒壊したほか、ガス漏れやエレベーター閉じ込めなどの被害が発生しました。
産業: 台湾セミコンダクター・マニュファクチャリングでは、台南工場の一部でシリコンウェハーに被害が発生しましたが、製品出荷に影響はありませんでした。ユナイテッド・マイクロエレクトロニクスでは、製造ラインが自動停止し、再調整が必要となりました。他の電子部品製造企業でも、一定の被害が生じています。

台湾政府・自治体の対応

馬英九総統は、被災地を視察し、現地対策本部で指揮を執りました。地震発生から72時間が経過すると生存率が低下するため、台南市は瓦礫の撤去作業を開始しましたが、行方不明者の家族からは「生存者を傷つける可能性がある」として抗議がありました。

維冠金龍大樓の倒壊と手抜き工事疑惑

倒壊した維冠金龍大樓では、柱の中にサラダ油缶や塗料缶が埋め込まれているのが発見され、手抜き工事の可能性が指摘されました。検察当局は、ビルの建設会社の元社長ら幹部を業務上過失致死容疑で逮捕しました。調査の結果、鉄筋の量が構造計算書に記載された量の半分しか使われていないなど、設計図と異なる構造が明らかになりました。また、1階から4階にかけての改築工事が、建物の強度を低下させた可能性も指摘されています。

海外からの支援

日本をはじめとする多くの国や地域から、台湾へ支援が寄せられました。

日本: 安倍晋三首相が馬英九総統にお見舞いのメッセージを送ったほか、日本赤十字社を通じて100万ドルの支援を実施しました。緊急人道支援チームが被災地に派遣され、支援物資を提供しました。東日本大震災の被災自治体からも義援金が送られました。
中国: 李克強国務院総理が慰問の意を表明し、中国紅十字会から緊急義捐金が送られました。
* その他: 香港、マカオ、シンガポール、アメリカ合衆国、韓国などからも、お見舞いのメッセージや支援の申し出がありました。

復興への道のり

地震によって甚大な被害を受けた台湾南部では、国内外からの支援を受けながら、復興に向けた取り組みが続けられています。建物再建やインフラ復旧だけでなく、被災者の心のケアも重要な課題となっています。

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